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ヒトコワ

砂の唄さんによるヒトコワにまつわる怖い話の投稿です

赤い三輪車
短編 2022/02/22 01:53 1,981view
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 和枝おばさんは勤続30年以上になるベテランの保育士さんです。同じ保育園でずっと働いているので、最近は昔通っていた園児がその子供を通わせるようになったなんてこともあるそうです。「保育園は楽しいところ」が信条の和枝おばさんでしたが、その保育園で楽しいこととは正反対の恐ろしいことがあったと話してくれました。

 今から数年前、新学期も始まった4月の中頃のことです。和枝おばさんはいつものように保育園へと車を走らせていました。その日はいつもより少し早く家を出たので、鍵が開いてるかなぁと思いながら運転していました。その保育園は敷地内に同じ法人が運営している老人ホームがあり、そこの守衛さんが鍵の管理をまとめてしていました。なので、鍵当番の先生が朝少し早く来て守衛室へ鍵を取りに行くのです。その日の鍵当番は和枝おばさんではなく、A先生という保育士1年生の新任の先生でした。

 保育園につくと駐車場にはA先生の車があったので、和枝おばさんはそのまま園に向かいました。いつものように玄関のドアを開けると、職員室にいたA先生が今にも泣きそうな顔で玄関に飛び出してきました。「あの、和枝先生大変なんです。とにかく、その、付いて来てください。」A先生の表情から、何か大変なことがあったと感じた和枝おばさんは靴もそのままに園内に入っていきました。

 A先生に連れていかれたのはホールでした。ホールは園児が遊んだり、集会の場になったり、毎日使われる小さい体育館のような場所です。「あれです。見てください」A先生が指さす方向を見ると、ホールの中央に一台だけポツンと赤い三輪車があったのです。三輪車の他におもちゃなどは散らばってなく、大きい遊具もいつもの位置にあり、三輪車さえ除けばいつもの朝のホールです。

「昨日、私とB先生が最後まで園に残っていたんです。それで…帰る前にB先生と一緒に園内を見回りして…その時はホールには何もなかったんです。本当です。」
「今日の朝、鍵をもらってきたのはA先生で間違いない?」
「はい。15分ぐらい前に守衛さんから鍵をもらいました。更衣室へ行こうとしたら、ちらっとホールの中が見えて…あれに気づいたんです…」
「昨日鍵を守衛さんに返したのはA先生?それともB先生?」
「えっと、B先生が『近道を教えてあげる』って一緒に守衛室まで付いて来てくれたんです。なので、鍵を返したのは私ですが、B先生も一緒でした。それから駐車場まで一緒に行ってお互い別れました」B先生もまた、何年もその園にいるベテランの先生で、周りの先生からも信頼されている素晴らしい先生でした。昨日も、A先生に見回る場所について詳しく教えてくれていたようでした。

 A先生から一通り昨日のことを聞いた和枝おばさんは携帯電話をカバンから取り出し、守衛室に電話を掛けました。

「昨日?7時少しぐらいに、新しくきた…そうAさんが鍵を持ってきました。それからは誰も来ていません。今日Aさんが鍵を取りに来るまで誰も保育園には入ってないはずですよ。点検ですか?昨日の巡回では窓も玄関もしっかりと閉まっていましたね」

「あの…和枝先生。あの三輪車どうしましょう?やっぱり片づけたほうが…いいですよね?」まじまじと三輪車を見ていたA先生はびくびくしながら聞きました。A先生の様子は三輪車を見ていたというより監視していたといったほうが正しそうでした。
「いいえ、あのままにしておいて。私はこれから園長先生に電話をするから、他の先生が来たら職員室で待っててもらうように言ってちょうだい。今日は多分休園ね」

「えっ休園!?」話を聞いていた私は思わず声が出てしまいました。
「そうよ。それから園児のおうちに電話してまわってねぇ。あの時は一生分電話したわ」
「そりゃあ、三輪車が移動してたら不気味なのはわかるけど…休園って…ちょっと大袈裟じゃな  
い?」私は半ば呆れたように言いました。
「いいえ、決して大袈裟なんかじゃないわよ。警察も来たんだから」和枝おばさんは私の発言を強く否定しました。

「だって、あの園に赤い三輪車なんて置いてないんですもの」

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コメント(1)
  • おもしろい
    幽霊よりもヤバイやつが侵入してたのかな

    2022/02/22/10:02

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