ビスクドールの瞬き
投稿者:繭 (42)
短編
2022/01/30
23:26
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以前、アメリカ人の知人が急死したときのことです。彼女は無類のドール愛好家で自宅に多数の人形を蒐集しており、形見分けとしてそのうち一体を譲り受けました。
日本に帰国後、友人の形見のビスクドールをリビングに飾りました。しかしその日から妙な視線を感じるようになったのです。
しばらくは気のせいだろうとごまかして日常生活を送っていたのですが……。
ある日夜中にトイレに起きた帰り、リビングで物音がしました。まさか泥棒かと警戒しそうっとドアを開けた所誰もおらず、とりあえずホッとしました。
続いてピアノの上に飾ったビスクドールを目の当たりにし、恐怖で悲鳴を上げました。
暗闇の中でビスクドールがゆっくり瞬きしたのです。
咄嗟に壁のボタンを押して電気を点ければ、ビスクドールのガラス質の灰色の瞳と視線が絡みました。
以降私はビスクドールを避け続けました。友人の魂が人形の中に宿っているのではと思ったのです。
さらにしばらくするとリビングから夜な夜な啜り泣きが聞こえ、精神が削られていきました。
私は友人の夫に電話で相談した末、ビスクドールの返却を決めました。
夫にビスクドールを渡す際その顔を覗き込み、人形本来の青い瞳に戻っているのに息を呑みました。
生前の友人は灰色の瞳をしていました。
この人形には友人の霊が宿り、故郷を恋しがっていたのでしょうか?
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リサイクルショップとかでみる中古のビスクドールって本当に怖い