廃屋で鬼ごっこ
投稿者:赤壁二世 (13)
俺が高校二年の頃の夏の出来事。
普段からよくつるんでるAとBとCの四人組で、地元からバスで20分ほど離れた廃村にあるくたびれた古民家へ行くことが決まった。
ネットで調べた情報だが、その古民家は廃屋となる随分前に改装して宿泊施設も兼ねて営業していたそうだが、人口減少に伴い利用者も居なくなり、今では心霊スポットの仲間入りだという。
勿論、俺達の目的は観光のために訪れるのではなく、閉館した古民家へ肝試しをしに行くことだ。
以降、俺の呼び名は〇男とする。
「〇男、ちゃんと場所調べたか?」
俺達のグループで一番硬派で勝気な性格のAが俺に聞いてきた。
というのも、この肝試しの言い出しっぺは俺だ。
「あそこのバス停から降りて、歩いて10分もしないうちに着くと思う」
この肝試しでネックなのが全員が17歳以下であるため運転免許を持っていないことだった。
したがって、公共バスを利用する他ないのだが、最終便を考えると時間帯が遅くても23時台になる。
夏休みということもあり、当日は両親に友達の家に泊まりにいくと嘘をつく前提で、例の古民家がある廃村へは泊まり込みで赴く予定だった。
決行日、俺達はたかだが一泊、それも夜通し肝試しをするだけなのに充分な食糧をリュックに詰めてバスへ乗り込む。
自分でも気づかぬ内に肝試しという行為に後ろめたさを感じているせいか、乗車した途端上客の視線が怪訝なものに見えてしまったが、恐らくはこんな時間にリュックを背負ってどこかへ向かおうとする高校生四人組に興味があった程度だと思う。
「バッテリー持ってきたか?」
「ばっちり。てか、歯磨きどうする?磨いてきたけど何か食べるっしょ?」
「一日くらい我慢しろよ」
時間帯のせいか閑散とした車内に俺達の声がやけに反響したように感じた。
しばらくすると目的地付近へ到着し、俺達は下車する。
その際、運転手が何か言おうとしたのか口を開きかけたのを思いとどまり、俺達を一瞥した後バスを発車させた。
舗装はされているが下町のように古い日本家屋がポツポツと建っている、外灯の少ない街の端。
本通りを進んだ先に一回り細い風化した道路があって、俺達はそっちを選んで突き進んでいく。
遠目に見えていた山々もいつのまにか視界のほとんどを埋め尽くすように近づいていて、ただのアスファルトの道は鬱蒼と生い茂る草木と混じり、まるで魔境のとの県境だと感じた。
「そういや野犬とかいねえよな?」
Bの発言を受けてその可能性に至らなかった己を責める。
熊とかの危険害獣の目撃情報のない片田舎だが、山の奥地には生息している可能性はある。
言い知れぬ不安を覚えた次の瞬間、キャアアアーーーッという女性に近い高音が静寂な山の中を駆け回った。
「へ?悲鳴?」
「バカ、鹿だよ」
身を屈めて警戒するCをバカにしたような面持ちでAが答えた。
動画で見た鹿はあんなに可愛らしい外見をしているのに、鳴き声はこんなに悍ましいのかと苦笑する俺。
妖怪化した霊とかかな
面白かったです
小説読んでるみたいで面白かったです
創作だろうけど、なかなか鬼気迫るものがあり、読ませる話だ。
現実問題として、廃屋に無断で入ると不法侵入になるので注意が必要。どうしても入りたいときは自治体の許可(特殊な見学)を取って、昼間に探索するのが得策。大抵は許可が下りないが、うまく行けば下りることもある。
しかし、廃屋廃墟探索は素人はやるべきではない。
情景が詳しく書かれていて想像しやすくて面白かった
押し入れの話の中でも面白かった