赤い!赤い!
投稿者:jiro (1)
私の子供の頃の楽しみは年1回の家族旅行だった。家族みんなで過ごすその時間が大好きで、
毎年ワクワクしながらその時を待っていた。
そんな私が経験したとある旅館での話。
その年の旅先は秋田県。
宿泊先である旅館は海沿いにあり、
とても大型で豪華絢爛な造りだった。
部屋からは大きな海が見渡せ、西陽が沈みゆく景色はそれはそれは美しいものだった。
あっという間に日も沈み、夕飯の時間。
夕食会場までは長い長い廊下を渡って行くのだがその途中、なんだか上手く言い表せない背中がヒュっとするような嫌な感覚に襲われた。
しかし美味しい夕食に舌鼓を打っているうちに
先程の事はすっかり忘れ、のんびりと食事を楽しんでいた。
「たっくん連れて先に戻ってテレビでも観てたら?」
食事を一通り済ませ退屈している私と弟に母がそう言った。
今年2歳の弟も段々とグズり始めていたので母の言う通り2人先に部屋に戻ることにした。
夕食会場を出て左に曲がると、例の長い長い廊下か続いていた。
先程のことを思い出し少し躊躇する。
ぎゅっと弟を抱き、早足で駆け抜けた。
夕食会場に響く賑やかな声が遠ざかっていく。
穏やかなオレンジ色の明かりが、ポッ、ポッと廊下を照らしていた。
と、弟を抱いた自分が夜闇で真っ暗な窓ガラスに反射し、映った。
違和感を感じる。
抱いている弟はまっすぐ前方を向いているのに
ガラスに映った弟は、じっとこちらを見ていた。
ほんの一瞬。
「気のせいかも」
自分に言い聞かせながら、
私は意外にも冷静に部屋の前まで辿り着くことが出来た。
部屋に入り電気を点け、抱いていた弟を下ろす。
その時だった。
途端に部屋の右奥を指差し、
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