確実に誰か乗ってる
投稿者:adooo (10)
思えば、初めから妙なクルマだったような気もします。オッサンになってから免許を取ったばかりで、こすってもぶつけても悔しくない、ただ走ればいい、という安いクルマを中古で探していました。
幸い、会社と付き合いのある業者から手ごろな値段で軽自動車を買うことができました。走行距離は6万キロほど。カーナビもついていない、10年近く前のモデルでしたが、シルバーの車体には特に傷もなく、そこそこ満足のいく買い物でした。
最初に異変に気づいたのは、音楽でもかけようとCDを入れようとしたときです。なにか入っています。イジェクトを押しても引っかかって出てこないようで、CDは勝手に再生されました。…音楽ではありません。
声です。なにかの声。お経のような。私の知っているような「般若波羅蜜多…」という調子のものではありませんでしたが、たぶんお経です。ありがたいお経なのかもしれませんが、ただただ不気味でした。
気味が悪くなってダッシュボードを開けてみると、なにやらお守りのようなものまで出てきます。筆文字でなにやら書いてありますが、漢字の成り立ち?象形文字?みたいなのがぐちゃぐちゃと書いてあって、私には読めませんでした。
とりあえず、そのお守りのようなものは捨てて、業者を呼んで、CDを取り出してもらいました。そのときに問いただすも、業者は「事故車とか、そういういわくつきの話は特に聞いていないし、扱っていて気になることもなかった。そんなものをお宅の会社のひとに売ったりしない」と話すばかりです。
それからでした。
助手席になにかが乗っているのです。運転していて前を見ていても、視界の端に助手席の方が少し見えますが、そのときに確実に誰かが座っている。小さな手とか、ぶらぶらする靴のようなものが見えます。
特に、それ以上なにかがあるわけではなく、気になって左手を見ても、だれもいません。当然です。一人暮らしの私が通勤するクルマの中ですから。なにもないのですが、気になっていまに事故を起こしそうで怖いです。とはいえ、すぐにクルマを買い替えるお金なんてないので、当分は我慢するしかありません。
そういえばこの前、「それ」に一度だけ話しかけられました。幼稚園くらいの小さな子どもみたいな声で「おしっこ」って言ってました。
自分が亡くなったことを知らないのかも知れませんね。
お経やお守りはそのためだったのかもです。