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妖怪・風習・伝奇

Blackさんによる妖怪・風習・伝奇にまつわる怖い話の投稿です

曰くの裏山にひそむ不気味な影
長編 2021/12/04 23:52 3,126view

ところがこれらのボール遊びをするにあたって、一番悩ましいのはその場所です。
ある程度のひらけたスペースが必要ですし、人の出入りの邪魔にならないところでないといけません。車が通る道路の近くなど、危険ですしもっての外です。
マンションの敷地内には広い平面駐車場もありましたが、やはり時折車が出入りしますし、何より駐車されている車にボールをぶつけてしまう可能性もあります。

そうして散々遊び場所の選定に苦慮した挙句、目を付けられたのが例の小屋のある山側にある駐車スペースでした。
こちらはそもそもあまり利用者のいない駐車スペースで、人や車の出入りもほとんどなく、車がおかれていない場所がちょうどぽっかり、ボール遊びをするにはいい感じに空いていたのです。

もしかするとその場所で遊ぶことに不安を感じた子も中にはいたかもしれませんが、そこは単純な子どもだからか、不気味な噂話よりもボール遊びの方が優先されて、いつしかみな、あまりその小屋のことを意識しなくなっていたのだと思います。

そんな中で、突然ある不可解な出来事が起こりました。

その日もいつも通り、小屋のある山に面した駐車スペースで、数人の子どもたちがボールで遊んでいました。
あまり人数が集まらなかったこともあって、2つの陣営に分かれてボールをパスし合う、ラリーのような形式を続けていたのだそうです。

すると突如、鋭い破裂音とともに、遊んでいたボールが破裂したとのこと。
しかも不思議なことに、ちょうど投げて空中にある状態で破裂したのだそうです。
何か釘のような尖ったものや、思い切り地面にぶつけたわけでもなく、ただボールを投げ合っていただけなのに突然。

それだけであれば、ボールが痛んでいて寿命だったのでは、といった納得の仕方もあったと思います。
ところが、その時遊んでいたメンバーの中に、以前から噂されていた不気味な影を見た、と言い出す子がいたのです。

その影は、小屋の外に出てきていて、木々の隙間からこちらをじっと眺めていた、とのこと。
頭からすっぽりかぶっている襤褸布のせいで顔をはっきり見られたわけではないが、なぜかとても恐ろしい表情をしていることがはっきりわかった、と言うのです。

すっかり忘れてしまっていたようで、しかしみなその噂のことは覚えており、ただ無意識のうちにも考えないようにしていただけだったようで、そのこちらを見つめる影を見たという話が再度出て以来、あれだけ流行っていたボール遊びをすることはぱったりとなくなりました。
誰もが、あの小屋に近づきたくなかったのです。

私はたまたまその日は、用事があってボール遊びには参加していませんでした。
ですがもしその場にいたら、あの不気味な影を見たのは自分だったかもしれないと思うと、とても恐ろしかったです。

そして以降、これまで以上にあの山の小屋のある方を視界に入れないよう、まかり間違っても何かの姿を目にしてしまわないように、心がけるようになりました。

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