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不思議体験

津々さんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

「生きよう」と思った不思議な体験
短編 2021/12/02 20:30 1,657view
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私には小中高と一緒で二つ年上の仲がいい先輩がいました。私が学校で何か困ったことがあると必ず助けに来てくれて卒業してからも「困ったことはないか?」「イジメにあっていないか?」と心配してくれて本当に頼りがいのあるいい先輩でした。

そんな先輩は高校卒業後、トラックの運転手として就職しました。私は先輩に就職祝いとして地元の交通安全のお守りを渡しました。すると先輩は車のカギにつけてくれて「ありがとな」といいました。

私が高校を卒業する時に先輩は「これ卒業祝い」といい合格祈願のお守りをくれました。それは私が短大に進学することを知って買って来てくれたのですが、もうすでに合格もしていましたが、そんなおっちょこちょいなところも私は好きでした。
お互い仕事と学校で忙しくなりたまに連絡を取るぐらいでしたが、必ず先輩は「なんかあったら俺に相談しろよ」と私の心配ばかりしていました。

そんな先輩は20歳で死んでしまいました。仕事中の居眠り運転が原因でした。

私は涙が枯れるぐらい泣きました。いつも心配してくれて気遣ってくれたおっちょこちょいな先輩が居なくなった…私は絶望してしまいました。先輩の後を追って“自殺”も考えましたが、先輩に怒られる気がしてできませんでした。

そして告別式が終わる時に先輩のお母さんに声をかけられました。「これは貴女が持っていて」お母さんに手渡されたのは私が就職祝いにあげたお守りでした。先輩はずっと大事にお守りをつけてくれていたみたいでした。

その後、私はなんとなく過ごし短大も卒業しましたが、ほとんど抜け殻で先輩が事故を起こした現場や二人でよく行った公園で「ぼーっと」しているばかりでした。

私は先輩が死んだ日に事故現場に花を添えに行きました。「先輩と同じ歳になっちゃたじゃん」そう呟きながら先輩と会話をした気になっていました。帰宅後、抜け殻のような生活をしている事に両親と言い合いになり私は車で家を飛び出しました。

「こんな時先輩が居れば…」それは叶わない事でした。

興奮していたせいか自分でも信じられないぐらいのスピードを出していました。しかも涙で視界が悪いのに…
「このまま事故を起こして先輩の所に行こう」なんて考えもあったのかもしれません。

すると大きなクラクションの音とヘッドライトの光がみえました。私が気付いたときには赤信号を無視して交差点に入るところでした。
そして次の瞬間、見た事もないほど怒った顔をした先輩が「まだこっちにくんな!オレが居なくても幸せになれよ!」と叫ぶ映像が頭の中に流れました。

その先輩の声で「はっ」と我に戻ると私と先輩がお互いお守りを買った神社の前で車は停車していました。すると私のカギから「ブチ」っと紐が切れた音がしました。それは私が先輩に渡したお守りの紐が切れた音でした。

死んでもなお私を心配して助けてくれた。そう思うと先輩を心配させないように「生きよう」とおもいました。その後、奇妙なな体験はしていませんが、どこかで先輩が見ていてくれている気がします。

こんな体験を信じてくれる人はいないので私と先輩だけの秘密にしようと思います

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コメント(1)
  • 感動しました。
    これこそ、本物の霊。
    誰かを想う心。
    それこそが魂なのだと思います。

    2021/12/14/00:24

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