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心霊

やーしゅんさんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

浴衣の女性、哀しみの眼差し
短編 2021/11/26 14:49 1,080view

「うちのお父さんは、ほんの少しだけ霊感があった。」
以前、おふくろがそんな思い出話をしていた時に聞いた
エピソードを投稿します。

私の父が亡くなる何年か前、たまには二人で温泉でのんびりしようと、
おふくろは父と二人で、とある温泉街に小旅行に行ったそうです。
観光地をぶらぶらと散策し、美味しいレストランで食事を楽しみ、
雰囲気のある人気旅館に到着、夕飯前に、まずはひと風呂いただこうと、
楽しみにしていた温泉でゆったりくつろいだ後のことです。

おふくろは、心地良いそよかぜの通る廊下の椅子に腰かけていたのですが、
廊下の向こうから、父が血相を変えた顔つきで、「早くこっちに来い」と
言わんばかりに手招きをしていたのだそうです。

最初はその意味がわからず、この椅子が心地良いからあなたもおいで!
と言いたくて、おふくろも父に向って手招きをしたそうですが、
その瞬間、父が「だめだ!早く来い!」とジェスチャー交じりで
訴えて来たので、疑心暗鬼にもその場を離れ、廊下の向こうの父の
元に歩いていったそうです。

手を引かれ部屋に戻ると、父は血の気の引いた青白い顔で、
「お前の背後に青白い顔の浴衣女が見下ろしていたぞ」と。

誰もいなかったのです。その椅子の周囲には誰も。

そよ風がせっかく気持ち良かったのに。
違います。それは、霊気だというのです。
しかも、何か哀しみとさみしさに包まれた、暗く冷たい空気です。

そんなやりとりの間、廊下にはお風呂上がりの何人もの人が通り過ぎ
ましたが、おふくろの横には、誰も立っていませんでした。

なんだか、切なくてかわいそうな出来事が、この温泉地であったのかも
知れないと、二人で手を合わせたそうです。

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