あなた、お亡くなりになったんですよ？

田舎暮らしの両親から聞いた話です。

ご近所さんで、仲の良かった奥様がいて、その奥様は、暇を見つけてはお茶に呼ばれて来るのが楽しみだったそうで、週に何度もお茶菓子を持って遊びに来ていたそうです。その奥様も数年前に旦那様に先立たれ、さみしかったのでしょう。両親は奥様を歓迎し、いつももてなしていたそうです。

しかし、その奥様も闘病生活に入ってしまい、ひとりさみしく亡くなられたと聞きました。

そんなある日のこと、夕飯の後片付けを終えて、両親たちは順番にお風呂を済ました時、驚きの経験をしたそうです。リビングに戻ると、あの奥様がうつむき加減に座っていたというのです。何度も目をこすって確認したそうですが、確かにあの奥様だったと。お茶をおもてなしていた時の、いつもの席に座ってじっとしているのです。

恐る恐る奥様の名を呼び、声をかけると、こちらに向けて顔を上げた瞬間、ぼんやりと姿が薄くなり、消えていったというのです。

数日後、また、同じような時間に奥様が現れました。その時はおふくろが一人だったそうで、怖くて叫びそうになったそうです。おふくろは、勇気を振り絞って声をかけました。

「あなた、お亡くなりになったんですよ？」

後から聞いた話ですと、病室でひとりぼっちで、亡くなったそうです。
夜の10時半頃に。

両親は、玄関先に塩を盛ったそうです。奥様がお茶飲みにいらっしゃらないように。それから、あの奥様の姿は見ていないそうです。