トイレに行けなくなった理由
投稿者:oyoyoko (1)
「ん?トイレから手が出てきたんだけど。」
よく考えると、今は真夏、そしてすごく暑い日である。こんな暑い日にセーターなんて兄は着ているはずがない。
お風呂場からは、母親のシャワーの音が聞こえる。
念のため、母親に聞きに行こうと思いお風呂場に行く。
「お母さん、トイレに手出したりした?」
「なにいってるの!」
聞かなくても母親は絶対無理だったが、怖くて家族の誰かのイタズラだったらいいと思い、わかっているが母親に確認に行った。
結果はもちろん、イタズラするわけもなく、お風呂の中のびちょびちょな姿をみれば、わかる。
廊下をウロウロしていたら丁度、父親も仕事から帰って来た。
父親なわけでもない。
「え?じゃあ、さっきの手は何?」
1人怖くなって、リビングで震えるが、結局正体はわからないままだった。
正直私は、霊感がまったくなく、一度も幽霊なんて見たこともない子供だった。
でも、心霊現象などすごく大好きで、テレビ番組があればいつも怖いと言いながら、母親を横に座らせてみていた。
母親にとってはいい迷惑だったと思うが、娘が見たいと言えば付き合ってくれた優しい母親だった。
いつか、私も心霊体験をしたいと願っていたがなかなか私は見ることが出来なかった。
そして今願ってもない程に私の前に現れた、謎の青いセーターを着た子供の手。
恐怖体験ができたので喜ぶべきだったのにも関わらず1人、恐怖で震えあがっていた。
何かされるわけでもなく、トイレからスッとで出てきた手は私がびっくりするとスッと引っ込んでいった。
こんなにも、恐怖体験をしたいと願っていた私だったが実際に体験すると怖くて怖くてたまらないのだと知った。
もう二度と出てこないでと、心の中で叫んだあの日から一度も私の前には姿を現せていない。
私が住んでいた、家は古い家でもなく、建てたばかりの新築の家だった。
住んでいる場所にも、お墓もなく、元々墓地だったわけでもない。
私が心霊現象だったり、恐怖体験をしたいと願ったことで出てきたのではないかと、大人になった今でも思っている。
あれから、25年ぐらいたったが、私の中の一番怖い体験が、トイレから青いセーターの手が出てきたことではないだろうか。
あの、小学生の日以来特に怖い体験は全くと言っていいほどない。
それはそれでいいのか、恐怖体験や心霊現象が好きな私には残念だと言えば残念になるのかもしれない。
だが、あの時のように、きっと出てきたら出てきたで「もう出てこないで」と、叫ぶのは目に見えている。
学生の頃、友達通しで恐怖体験や心霊体験を話すのが流行り、私の中にもエピソードが一つあったことはすごく嬉しかった。
それから、大人になり一度もその手は見ていない。
大人になった今でも、小学生だった私の、自分の家で起きた恐怖体験を忘れることができない。
実家から離れて暮らしている今、体が疲れることがない。
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