祖父の命を救った提灯の灯り
投稿者:紗英 (6)
私の祖父は太平洋戦争に兵隊として南方の島に駐留していた部隊に参加していました。
まだ若かった祖父は斥候として現地のジャングルを偵察していたそうです。
そのうち仲間とはぐれてしまいジャングルの中で迷子になってしまいました。
夜が近づくとどこからともなく獣の唸り声や、毒虫が体を這ってきたりと命の危険を感じたそうです。
こういう場合はその場を動かず、じっとしているのがよいそうなのですが、祖父は一刻も早く味方の陣地に戻りたくて歩き回ってしまったそうです。
こうなったら本格的に遭難してしまいます
お腹が空き体力が無くなり、これ以上歩けない、もうこれでおしまいかと思ったその時、真っ暗闇のジャングルの中で遥か前方にぽっと灯が見えたそうです。
味方の陣地かと思い力を振り絞ってその明かりの方へ歩いていくうちにその明かりは提灯の灯りだということに気づいたそうです。
さらにその提灯には祖父の家の家紋が描かれていました。
提灯のそばまで来たら更にまた前方に同じ灯が。
そうやって自分の家紋のついた提灯の灯りを辿っていくうちに、なんと味方の陣地にたどり着いたそうです。
隊の皆はよく戻ってきたと無事を喜んでくれました。
そうしているうちに戦争も終結し、祖父は日本の我が家に戻ってきました。
南方の島で体験した不思議な提灯の話をしていると、祖父の母、私からいうとひいおばあちゃんが涙を流し始めたそうです。
涙の理由はこうでした。一人息子を戦地に送り出してからというもの息子の無事の帰還を祈って曽祖母は毎晩真夜中に裸足で近くの神社に行って
お百度を踏んでいたということでした。その暗い夜道を照らしていたのが、戦地で祖父を陣地に導いた家紋の入った提灯だったのです。
そうです。あの提灯。曽祖母の息子を思う祈りが届いて祖父を救ったのでした。
お百度参りって効果ありますか?