ズリズリ、ズリズリ
投稿者:Sennogi (6)
俺が大学生だった頃の話だ。
適当な山の河原へ一人で行き、ソロキャンプするが趣味だった。
その頃は、彼女と別れてどうしても憂鬱な気分が多くてさ。
だから、気晴らしもかねて普段はいかないような山奥に一人で行ったんだ。
でも、大勢で楽しめるキャンプじゃなくて、大学生の貧乏なソロキャンプ。
道具もおひとり様で楽しめる仕様で細々としたもんしかなかった。
車にテントやらランタンやらケトルやら着火剤とかもろもろ積んで、食料に肉とかカップラーメン、インスタントコーヒーマシュマロなんかを積んでいった。
不思議とどうしても不健康なもんをあえて山で食うとうまいんだ。
あと一応、遭難した時のためにと思ってチョコレートも持ってたかな。
俺の場合は独学、我流のソロキャンプだ。
まず車を使う。県内で有名な大きな川の上流を、県道を使って車で目指すようにいけるとこまで登っていく。
早朝のうちに車で行ける所まで上りきって、道路の脇に車を止めて降りる。
そこから自分で歩いて良いかな、と思う所まで川に沿って山を登るんだ。
ある程度行ったら荷物を降ろして設営する。
一人で大自然を感じながら人気のない河原で火を起こして、一服しながら川の流れと空を眺めているのが楽しいんだ。
当然、夜になると薪をしてカップラーメンと簡単に肉を焼き、最後にコーヒー飲みながら焼きマシュマロするんだがこれがうまいんだな。
そうこうするうちに夜が更ける。普段なら夜の八時なんてやることだらけで、動画見たり携帯やったり、インターネットしたりで忙しいんだが何もすることない。
だから星でも眺めながら過ごすんだ。
当然、河原の砂利場に近い場所だから背中が痛くならないようにレジャーマットを敷いて、仰向けに寝転がる。
一時間ぐらいは夜空を眺めた頃かな。
川の奥の茂みの方からなんか嫌な視線を感じて見返す。
何もない。いや、気のせいかと思ってまた寝転んで空を眺めると、なんか見られてる気がする。
っていうのを何回か(時間は五分から十分おきぐらい)繰り返してさ。
初めはイノシシなりシカなりかなと思ったよ。クマは出ないって聞いてたから当然警戒はしてない。
でも、さすがに気味悪くなるし、テントに早々に引っ込んだ。
しばらくはよかったんだよ。
でも、葉とか木々がこすれる音以外に音がする。
ズリズリ、ズリズリ。
何かを引きずってくるような音。
ズリズリ、ズリズリ、ズリズリ。
ガチコエー!! 息止めて読んでしまった