張り付く女の執着心
投稿者:rond (1)
私の大学時代の先輩はとても感性が豊かで、人を見抜く力があり、霊的な体験も多い人でした。
私はそんな特別な力がある先輩のことをスゴイなとずっと尊敬してきました。
例えば私が引っ越し先を探している時などは、検討している物件をその先輩に一緒に見てもらって、「ここは大丈夫。何も気持ち悪い所はないよ。」とお墨付きをもらえると安心して賃貸契約を結べました。
というのも、その先輩は、過去10回ほど引っ越しを経験していて、毎回物件を見に行くたびに、怪しい物件や気持ち悪い物件と出会って来ていて、その目線からの物件選びに関してはプロ並みでした。
例えば、ドアノブを触った時に「あ、ここはダメだ。」と分かったり、どうも部屋に行くまでの階段の踊り場が気持ち悪いとか、とにかくいつも何か感じ取る力を持っていました。
そんな先輩でも、契約して住み始めてから不思議なことを体験したこともあったそうです。
ある時寝室で寝ていたら、隣の部屋からものすごい数の足音が聞こえてきて、「あこれは確かめたらダメなやつだ。」と感じた先輩は、とにかくおさまるまでやり過ごしたそうですが、後々になって詳しい人に聞いたら、そこは霊道という霊の通り道になっている場所だったそうです。
そんな不思議な体験が多い先輩でしたが、ここ数年はそのたぐいの話はめっきり聞かなくなっていました。
しかし、その先輩が最近バーの接客のバイトを新しく始めたという話を聞いてしばらくたった頃に、久しぶりに不思議な話を耳にしました。
久しぶりというより、そのたぐいのモノではあるのですが、初めて聞くタイプのものでした。
その先輩はよく通っていた仲のいいバーのマスターから、金曜日と土曜日だけバイトしないかと誘われ、お酒も人との会話も得意だった先輩はOKしてバイトを始めました。
そのバーは繁華街の少し外れにあって、夜の8時から朝の4時までやっているので、お店が終わった後にお姉さんたちが来たり、男性も女性も色んな人が常連さんとして通って来ていました。
なので、いつもお店にいるお客さんたちは顔なじみの人ばかりという日もたくさんあります。
そんなある日、先輩はいつものように先に来ていた3人ほどの常連さんたちと他愛もない会話をしていました。
そこに、いつもよく飲みに来る中年の少し変わり者の男性がドアをキィと開けて入ってきました。
そのすぐ後に髪の長い女性が見えたので、先輩はおしぼりを2つ用意してカウンターに置いたそうです。
でも、他の常連さんから「何で2つも出してるの?」と問いかけられ、先輩は「え?だって女の人が一緒に来てたじゃないですか。」と答えると、その男性は自分は一人で来たと。
先輩は、そうか、自分は久しぶりに見てしまったんだと直感し、怖がらせないように私の勘違いでしたとはぐらかしその場を収めました。
でもその後、一人のお客さんに「どんな女の人だったの?」と聞かれ、髪が長くて細くてスラっとしていて、目鼻立ちがどうでと容貌を話すと、そのお客さんが「あ、その人あのお店の~ちゃんだわ。」と言ったそうです。その女の人は事情があって一緒になれないけど、変わり者の男性のことがずっと忘れられないのだと。でも、まだその女の人は生きています。
その話を聞いて先輩は、私は初めて生霊というものを見たんだなと確信を得たそうです。
ドアから入ってきた時、男性の背中にピタッとくっついていたのを思い出してゾッとしたそうです。
※コメントは承認制のため反映まで時間がかかる場合があります。