不審者注意
投稿者:fit (10)
私の実家の墓地は少し遠方の大都市にあります。そのため墓参りは年に数回程度でした。私がまだ小学生の頃の夏、実家の家族で墓参りに行きました。墓地は公営で、そこには少なくとも100以上のお墓があったと思います。
いつものように実家の墓をある程度掃除し、きれいにしたところで花を置きました。そのあたりで気になったのですが、近くにある木の陰に1人の男性と思わしき姿がありました。墓地なのでほとんどの人が墓参りをしてすぐに帰るような状況の中、その男性は墓参りに来た様子もなく木の陰に隠れていました。家族はそれに気づかない様子で墓に水をかけたり花を飾ったりしていました。
しかし男性はずっとこちらの方を見つめてきます。以前からその墓地には不審者注意という看板が立てられており、まだ当時小学生だった私が不審者という言葉の意味を知らず、実両親に尋ねた記憶があります。なのでその男性こそが不審者の1人なのかもしれないと思っていました。
すると男性が木の陰から少し前に出てきて私たちのいたお墓の場所に向かってきました。しかしそれでも家族は誰もその男性の存在に気付かないようでした。さらに男性が私たちの方へ近づいてきたかと思うと、その周辺の墓に当たることなくそのまま通過して、そのうちの1つのお墓の中へ消えてしまいました。
途中実家の墓の辺りも通過したのですが、それでも家族はだれも気付きませんでした。1人だけ全然違う方向を見ていた私に対し、実両親が虫でも飛んでいたの?と尋ねてきました。あれだけ私にははっきりと見えていたのにその場にいた他の家族には誰も見えていない、それがおそらくこの世のものでないと思うとこれ以上私にするのは良くないと思って何も言いませんでした。
その墓場に不審者注意という看板があるだけに、不審者に遭遇する人が後を絶たないのは間違いないと思うのですが、その一部はもしかするとこの世の人でないのかもしれないと今でも思っています。
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