運転免許の合宿中に起こった怪異
投稿者:深青 (7)
これは私の母が若い頃実際に体験した話です。
母は運転免許を取得するため、1ヶ月程度の合宿へ参加しました。昼間は運転の練習をしたり、夜は同じく合宿に参加しているメンバーと遊んだりして楽しく過ごしていたそうです。
そんなある日のことでした。
深夜2時、ふと母は妙な気配を感じて目が覚めました。真っ暗な部屋はとても静かで、いつもは聞こえるはずのルームメイトである女の子の寝息が聞こえてきません。
おかしいなと感じて部屋を見渡そうとした時に気が付きました。首から下がまったく動かないのです。どうやら金縛りのようでした。
焦って隣で寝ているルームメイトに助けを求めようと顔を横に向けた時、真っ白な浴衣を着た坊主頭の男性が自分の布団のすぐ横に座っていることに母は気付きました。
両足を伸ばして座っている男性はひどく無表情で、言葉を発することはありませんでした。ただ、人間離れしたものすごいスピードで、上体を前に倒しては上げ、倒しては上げを繰り返していたそうです。まるで壊れたバネのようだったと母は言いました。
そしてそんな男性の向こう側で眠っているルームメイトの顔には、彼女の頭部全体を覆うほどの大きさの蜘蛛が乗っかっていました。壁の時計に目をやれば、秒針がありえないほどの速さでぐるぐる逆回転しています。
あまりの異常な光景に母の精神は限界を迎え、そのまま気を失ってしまったそうです。
翌朝、目が覚めてルームメイトに確認するも、彼女はまったく心当たりがないようでした。
夢だったのか?と考える母の鼻先を、その時不意に、お線香の匂いが掠めました。
不思議に思って部屋の窓を開けてみると、眼下には広大な墓地が広がっていました。
その後、食堂で聞いた話では、どうやら今朝、昨日の深夜に亡くなった男性が新しくお墓に入ったばかりだということでした。
その話を聞いてなんとなく合点のいった母でしたが、ただ一つ、墓地のことだけがずっと気になっているようです。
合宿に来たばかりの頃には絶対にあんな立派な墓地はなかった、あったらすぐ気付くはずだ、あの朝から急に現れたように感じたと今でも不思議そうに語っています。
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