不要なものをもらってくれるお地蔵さん
投稿者:深青 (7)
母が生まれた村は山の中にあり、その外れには小さなお地蔵さんがあったそうです。
お地蔵さんの不思議な力に気付いたのは偶然だったと言っていました。
なんでもお地蔵さんの前に不要な物を持ってきて、
「お地蔵様、これはいらないです。もらって下さい」
とお願いすると、その不要な物が消えてしまうのだそうです。
その秘密を知っているのは母と友達の二人だけで、時々お地蔵さんにお願いしては不要な物を消してもらっていました。
なにせ山の中ですから、家の畑や敷地内に不法投棄されたゴミがあるのだそうです。
不法投棄されたゴミはその家の人が片付けるしかないので、家計の負担になります。
当時の母と友達は子供ですし、お地蔵さんの不思議な力は内緒にしていたので、毎回少しだけお願いしていたそうです。
ある日の夕方、いつものようにお地蔵さんの前で友達と遊んでいたら、軽トラックに山のように荷物を積んでいるおじさんに声をかけられたそうです。
ずいぶん古びた軽トラックで、荷台には古い冷蔵庫や洗濯機、物干し竿にうす汚れた布団などが積まれていました。
母はお引っ越しかなと思ったそうですが、おじさんは運転席に乗ったまま、
「お嬢ちゃん達、あんまり人が来ないような広い場所を知らないかい」
と聞いてきたそうです。
友達はすぐにピンときて、
「おじさん、もしかしてそれ捨てるところ探してるの?」
と尋ねました。
おじさんは慌てて否定しましたが、こんな山の中、人が来ないような広い場所を探す古い荷物を大量に持った人は、不法投棄をしに来た人です。
母と友達が睨みつけると、おじさんはしどろもどろになりながら早口で言い訳をし始めたそうです。
「いや、いらないんだよこれ。おじさんも困ってるんだ。軽トラもボロボロだろ。この軽トラごとさ、もらってくれる人がいればいいんだけど」
そう言うとおじさんは軽トラックを発信させましたが、直後、道路脇の段差でバランスを崩し横転。警察が来る騒ぎとなりました。
結局、そのおじさんは不法投棄の常習犯らしくそのまま警察のお世話に。
母と友達はお地蔵さんのおかげだと思ったそうです。
昔話でありそう