「僕のセイバータイガーの爪返してください」

着の身着のまま家を飛び出してしまったということでした

障害を抱えているため思い込みが激しく、そう思い込んだら周りが見えなくなってしまうそうで

どうにか警察だけは勘弁してくださいと

何度も懇願されました。

大家の二人は何をいうわけでもなく心配そうに後ろに立っていて

例の息子は（といっても年齢は３０歳くらいですが）大家の奥さんにしがみついたまま

ヒックヒックと泣いていました。

しょうがないことなのかもしれないですが

３０歳を越えるであろう男性が高齢の女性にしがみついて泣いているのと

何度も土下座をする彼の母親を見て気持ち悪くなり

これ以上関わり合いになりたくないと感じ

「今後一切こういうことがないなら大丈夫です」

といいドアを閉めてしまいました。

少し時間がたつとちょっと冷たすぎたかなと考えないこともなかったですが

障害を持っていたとはいえほとんど犯罪のようなことをされたので

なるべく考えないようして忘れるように努めました。

それからまた１週間くらい経った頃です

買い物から帰ると

あの男が私の家の前に立っていました

え？と私が固まっていると

彼が私に一直線に近づいてきて

「こ、こ、この前はごめんなさい」

と私にビニール袋を手渡して走り去って行きました。

呆気にとられながら部屋に入り

ビニール袋の中を確認すると

何かのプラモデル見たいなものと

袋に入ったチョコなどのお菓子が入っていて

ちょっと気持ち悪さを感じましたが

彼なりの謝罪の気持ちなのかなと考え納得することにしました。

しかしその翌日のことです。