電話を終えた父さんに私は、言ってしまったのです。
「ねえ見て、夜の湖ってすごくきれいだね、キラキラ光ってるよ」
父さんは私の言葉に促されるように顔を上げて湖の方を見ました。
「ね、きれいでしょー」
父さんは反応しません。
「父さん?」
父さんの顔を見上げます。
父さんは顔をくしゃくしゃにして泣いていました。さっきの安堵の泣き顔ではありません。
まるでひどく叱られた子供のような泣き顔だったと思います。
父さんはしゃくりあげながら必死に何かを呟いています。
「どうしたの・・・」と声をかけた直後、父さんは大声で叫びながら湖に向かって走り出し、バシャバシャと水飛沫を立てながら水の中へと入っていきました。
突然の父さんの奇行に私はパニックになってしまい、この前後の記憶はあまりありません。
後から聞くと私は湖の前で「父さんが!父さんが!」と半狂乱で叫んでいるのを母さんに保護されたそうです。
父さんの遺体は翌日発見されました。
お葬式が終わった後も私は自宅で泣いていました。
父さんの死が悲しいのはもちろんですが、それ以上に私のせいだという罪悪感で押しつぶされそうでした。
泣いて泣いて、泣き疲れて寝て、起きてはまた泣いて。
ある夜、また泣き疲れて寝ていると、夢にあの湖が出てきました。
父さんはあの時と同じようにクシャクシャになって泣いていますが、夢の中では父さんの呟いていた言葉がはっきりと聞き取れました。
「たくちゃん!ごめんな。今度は見捨てないからな」
そして父さんはまた湖に向かって走り出しました。
そこで目が覚めました。
たくちゃんって誰だろう。
聞き覚えのない名前です。
リビングに降りると母さんとおじいちゃんとおばあちゃんがいました。
私はなんとなくたくちゃんって知ってる?と聞いてみました。
するとおじいちゃんとおばあちゃんは血相を変えて、「誰から聞いた!?」と迫ってきました。
予想外の2人の反応に驚きながらも先ほど見た夢の話をしました。
2人はその後自室にこもって何やら話し合っています。
母さんは全く心当たりがないようでした。






















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