母が死んだ。
僕が高校生の頃に父が亡くなって以来、母とはほとんど会っていなかった。
仲が悪かった。
理由はいろいろあった。
大学へ進学して家を出てからは、電話もほとんどしなくなった。
結婚したことも。
子供が生まれたことも。
母には伝えていなかった。
だから、母が入院したと聞いたときも、どこか他人事だった。
仕事も忙しく、お見舞いにも行けなかった。
そんな母の訃報が届いた。
葬儀を終え、遺産相続の手続きを進めていく。
母が最後まで住んでいた家も、土地も僕が相続することになった。
20年以上ぶりに訪れた実家は、記憶の中よりずっと古びていた。
壁は汚れ、
庭には雑草が伸び、
雨戸の一部は壊れていた。
周囲には新しい住宅が次々に建っている。
その中で、
僕の実家だけが、
時間から取り残されたように建っていた。
正直、
こんな家を残しておく気にはなれなかった。
妻とも相談し、
家を解体して土地を売ることにした。
後日、測量士に来てもらうことになった。
⸻⸻
「かなり古いですね」
測量士の男性は、家を見上げながら言った。
「はい。僕もここに来るのは20年以上ぶりなんです」
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