「お婆さーん、いるー?」
返事はない。
家の中はひどく汚れていた。
ゴミや埃がひどく、とても人が住んでいるようには思えなかった。
私は急に現実的になった。
「……何やってんだ、私」
そう思って、すぐに引き返した。
私はその場から走って逃げた。
今でも、よく思い出す。
何度も話した。
声も覚えている。
話した内容も覚えている。
古いガラケーを持っていたことも覚えている。
なのに。
お婆さんの顔だけ、思い出せない。
ただ一つだけ、私ははっきり分かることがある。
私は、一人じゃなかった。
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