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特別投稿

礎吽亭雁鵜さんによる特別投稿にまつわる怖い話の投稿です

一家同時自殺
長編 2026/08/14 11:31 90view

【首吊りのロープについて】
ロープは近隣のスーパー、雑貨店などへの聞き込みから3人がそれぞれ1本10m程度のものを別々に買っていたことがわかった。
心中ならば誰か一人が買いに行けば済むはずなので、このことも心中自殺ではないことの根拠の一つになっている。

【近所や関係者への聞き込み】
KとA美は2年ほど前に売られていた築20年のこの家を購入して住んでいた。
そこにKの実弟Tが半年ほど前から居候するようになったが、どうやら勤めていた会社が倒産してしまい住んでいたアパートの家賃を払えなくなったのが原因らしい。
不景気のせいかTは再就職はなかなかうまくいっていなかったが代わりに奥さんの家事を手助けしていて、近所の人は彼が買い物や庭や玄関の掃除をしているのをよく見ていたとのこと。
子供はいないものの仲の良い家族と多くの人が思っていたそうだ。

【それぞれの書いた遺書について】

【主人Kの遺書】
結婚して5年間なかなか子供に恵まれず環境から変えようと家まで購入して気負っていたもののやはりなかなかできず両親、義両親からの重圧を感じていた。
そこでA美には秘密で男性不妊の病院にかかってみた。
少しでも専門医から助言がもらえればと藁にもすがる思いだった。
結果はいわゆる種なしだった。
やり切れない絶望感があったが同時にA美や親に対する申し訳なさでどのように伝えるべきか迷っている内に言い出せなくなってしまった。

そんなときにA美が妊娠したと報告してきた。
何かの間違いではないかと思った。
再度病院に行き事情を説明して再検査を受けたが結果は変わらなかった。
先生は言いにくそうではあったが自然性交での受精可能性は0だと断言した。
混乱する頭にふとTの存在がよぎった。
そんなことは考えたくもない、疑いたくもないがTが父親なのではという疑念を捨てることができなかった。
一度疑い始めると二人の行動、視線、会話のすべてが怪しく思えてきた。
だが私には事実を知ろうとする勇気がなかった。また疑ったまま生きていけるほど強くもなかった。
どうせ生きていても子供を残せないのなら意味がない。
何も知らずに誰も疑わずにこのまま終わりにしようと思う。
思い出も思い入れもあるこの家で死ぬことを最期のわがままと思って許してほしい。
どうあれ二人には幸せに過ごしてほしいと願う。

【実弟Tの遺書】
この家で3人で過ごした半年はとても楽しく本当に二人には感謝しています。
ただ私は兄さんには死んで詫びなければならないことがあります。

3ヶ月前のことです。
兄さんが仕事で家を空けていたときA美さんと関係を持ってしまいました。
言い訳がましく聞こえてしまうかもしれませんがどちらからというわけでもなく、自然と目が合い、手が触れ合い、そのまま言葉もなく互いを求めてしまいました。
A美さんは子供ができない重圧に日々苦しんでいて、自分はなかなか次の仕事が決まらないことに苦心していました。
そんな張り詰めた二人でしたので何かが破裂するかのように後先考えない行動に出てしまったのだと思います。
過ちはこの1日だけですが心には澱のように罪悪感が残りました。
先日A美さんから妊娠のご報告がありました。
私は不安でたまらずA美さんが一人の時にそれは誰の子かと問い詰めてしまいました。
A美さんは何も答えてくれませんでした。
しかし昨日A美さんが自室で大声で泣いているのを聞いてしまいました。
あの日の過ちが原因だと確信に変わりました。
死んで償いになるとも思いませんが兄を裏切って騙して生きられるほど強い人間ではありません。
それならば楽しく過ごせたこの家で人生を終えてしまおうと思いました。
二人には最期まで迷惑をかけてしまい申し訳ありません。
二人の幸せを心から願っています。

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