年配の警察官は椅子へ座るよう促し、私は言われるまま腰を下ろした。
机を挟んで若い警察官が白い紙と鉛筆を取り出す。
「怖かったね。不安なのは分かるから、少しだけお話を聞かせてもらえるかな。」
私は小さくうなずいた。
「まず、お名前と住所を教えてくれる?」
私は自分の名前と住所を答えた。
その瞬間、若い警察官の表情が一変した。
「ごめんね。もう一回、住所を言ってもらえるかな?」
私はもう一度同じ住所を伝えた。
困ったような顔をした若い警察官は、「少し待ってね」と言って奥へ入っていく。
年配の警察官と何か話している。
しばらくして二人とも戻ってきた。
今度は年配の警察官が向かいに座る。
「何度もごめんね。本当にその住所で合ってる?」
私はもう一度うなずいた。
「ありがとう。それじゃ、お家の電話番号は分かる?」
私は電話番号を答えた。
年配の警察官は受話器を取り、電話を掛ける。
コール音だけが響く。
誰も出ない。
受話器を置くと、私に向かって優しく聞いた。
「お腹空いてないか?何か食べる?」
私は首を横に振った。
その人は少し残念そうに笑い、もう一度電話を掛けた。
その姿を見て、子どもながらに「この警察官は優しい人なんだ」と思った。
再びコール音。
やがて電話がつながった。
「ご家族の方が出てくれたよ。本当に良かった。」
その言葉を聞いた瞬間、私は安心してまた泣き出してしまった。
若い警察官がティッシュを差し出しながら続ける。
「記録に残さないといけないから、もう少しだけ教えてくれる?」
私は、学校から帰ってランドセルを置き、友達の家へ向かったこと。
スーパー近くの友達の家を4時30分に出たこと。
そのまま話した。
若い警察官は壁の時計を見た。
そして、一瞬固まった。
大きな地図を持ってきて広げる。
「ここが、この交番。」
指差す。
「そして、君のお家はここ。」
見ただけでも相当な距離だった。
「大人でも40分くらい掛かる距離なんだ。子どもの足で15分ほどで来られる場所じゃない。本当に4時30分だった?」
私はうなずいた。
若い警察官は再び困った表情を浮かべた。
そこへ年配の警察官が戻ってくる。
「お母さんがすぐ迎えに来るよ。とても心配していたから、安心させてあげてね。」
そう言って、私の頭を優しく撫でた。
若い警察官は事情を説明する。
年配の警察官もメモを見て驚いた表情になった。
「うーん……。」
そう呟くだけだった。
「もう少しだけ、ここで待っていてね。」
そう言って、お菓子を持ってきてくれた。























※コメントは承認制のため反映まで時間がかかる場合があります。