「小暮ならとっくに別れて一人暮らしじゃよ。届け出も貰っているから間違いない」
おじいさんは同じ集合住宅に住む大家さんだった。。
「あーやっぱり?」
「間違いない。引っ越し屋が来て女性の荷物だけ入れて去っていったの覗き見てたのじゃ」
「それいつのこと?」
「うーん。4、5年前?」
初老の家内まで出てきた。
「小暮の住んでる一階の角部屋、どういうわけかカップルが別れるのよ」
「呪われてるのかしら?」
「かもね。嫉妬深い幽霊がいるかもよ?」
ひゃー……。おばさんたちが悲鳴をあげる。
「そういえば、わたし赤ちゃんの声聞いたかも」
「え、赤ちゃんて小暮さんの?」
「わかんない。でも小暮さんのとこ、カーテン閉めないこと多いから部屋の様子見れちゃうんだよね。ちっちゃいベッドがあったの。赤ちゃん用の」
「赤ちゃんか……。玄関の前で小さい靴下落ちてたことあったのよ。片方だけ」
「なんだか不気味だわそれ」
「小暮さんて夕暮れまで帰らないでしょ。それまで誰が面倒みてるの、赤ちゃんの」
「幻覚、幻聴ってこと?」
皆黙り込む。
気味の悪い空気の中、打破しようとおばさんが発言する。
「小暮が女を連れ込んだの見たことある?」
「いんや、ない」
「そういえば、わたし見たかもしれない」
「ちょっとやめてよ。怖くなるわよ」
「だって……。窓からみえたのよ。女性のシルエット」
「……」
「じゃあ、やっぱり幽霊? 幽霊と同棲して案外和気あいあいだったり……」
ひゃー……。おばさんたちが再度悲鳴をあげる。
家に帰ると小暮はなにをすることもなくリビングのソファに深々と座ったままだった。
カーテンも閉めてない窓からは夕暮れの朱色が
入り込むが小暮は気にする素振りをみせない。
やがて陽が落ちて部屋が真っ暗になったが
明かりをつけることなはない。
























※コメントは承認制のため反映まで時間がかかる場合があります。