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不思議体験

志那羽岩子さんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

さわってるのに遠い
短編 2026/02/18 08:54 248view

「触ってるのに、遠い」

そのとき、鼻の奥にあの匂いがありました。

甘くて、冷たくて、鉄みたいな匂い。

笑おうとしました。でも、できませんでした。

翌朝、地元の友達からメッセージが来ました。

「昨日、川沿いで会わなかった?赤い上着着てたよ。声かけようとしたら、暗いほうに歩いていって、なんか怖くて呼べなかった」

赤い上着は、押し入れの奥にあります。何年も着てません。

昨夜、わたしは外に出ていません。

リビングに行くと、ソファの毛布がへこんでました。

人が寝てたみたいな形でした。

でも、甥の体より細くて、肩の位置が少し高い形でした。

へこみのふちに、細い泥のあとがありました。まだ湿ってました。

匂いが、少しだけ残ってました。

わたしは、そのへこみに触っていません。

触ったら、今あるこの体の感じが、もっと遠くなる気がします。

もしまた甥に「遠い」って言われたら、

そのときは、わたしのほうから聞こうと思います。

「どっちが遠い?」って。

もし、甥が答えられなかったら、

赤い上着を出します。

それを着るのが、どっちなのか、見ていようと思います。

匂いは、まだ少しあります。

空気が、ほんの少し重いです。

今夜、わたしは、ちゃんとここにいられるでしょうか。

それとも、もう一人のほうが、先に外に出るんでしょうか。

[月うさぎ ◆x7J8mY2Q]

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