私は包み紙を折り、糸で縛り、机の引き出しの奥にしまいました。そこには、抜けたまつ毛、切った爪、昔もらった手紙があります。身体の一部と記憶は、媒介として優秀です。私は合理的です。
翌日、彼は普通でした。
笑っていました。
私にも話しかけました。
それがいちばん残酷でした。
でも、その日の三時間目、彼は胸を押さえました。
ほんの少しだけ、です。
咳をしただけかもしれません。
姿勢を直しただけかもしれません。
でも私は見ました。
四時間目も、体育のあとに、また一度。
昼休みに、友達と笑いながら、ほんの一瞬だけ。
偶然です。
たぶん。
その日から、引き出しの奥が甘い匂いを放つようになりました。最初は気のせいだと思いました。でも母が言いました。
「なんか甘い匂いしない?」
私は何も言いませんでした。
次の日、学校の廊下でも、ふと同じ匂いがしました。彼が通り過ぎたあとに、わずかに。
熟れすぎた果実みたいな、腐りかけのカカオみたいな匂いです。
彼はまた胸を押さえました。
一瞬だけ。
私は何もしていません。
ただ、思っただけです。
思い込みは現実より強いのです。だって私は、零・五秒の歪みから、未来を生成できるのですから。
最近、彼は時々、私を見ると、ほんの少しだけ顔をしかめます。
痛いのかもしれません。
匂うのかもしれません。
どちらでも構いません。
愛とは変換装置です。
私は優秀な変換機です。
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