谷内とは、入社してきてすぐに仲良くなった。
2つ下の後輩だけど、年齢差を感じさせないタイプで、気づけば一緒に昼飯を食べるのが当たり前になっていた。
お調子者で、興味を持ったことにはすぐ飛びつく。
妙に人懐っこくて、放っておけないやつだった。
営業に本配属されてから、谷内は忙しくなった。
数字を追い、取引先に頭を下げ、飲み会も増えた。
帰りが遅くなる日が続き、疲れた顔で出社することも増えた。
「最近、夏美がちょっと不機嫌なんすよ」
昼休み、谷内はため息をつきながら言った。
夏美。
谷内が大学時代から3年付き合っている彼女で、この前の会社のBBQにも来ていた。
色白で黒髪がよく似合う、控えめだけど気が利く子だった。
「“また飲み?”って言われて……。
それも仕事のうちってのは分かってるはずなんすけどね」
谷内は困ったように笑った。
その頃から、谷内のスマホがやたらと鳴るようになった。
昼休みでも、会議前でも、帰り際でも。
画面に表示される名前は、いつも同じだった。
夏美。
「最近、ちょっと……きついっすね」
帰り道、谷内がぽつりと漏らした。
「“今どこ?”とか“誰といるの?”とか、
前より細かく聞かれるようになって」
「束縛ってやつか」
「まあ……そうっすね。俺も悪いんすけど」
谷内は自分を責めるように笑った。
その笑顔が、どこか痛々しかった。
「どうしたらいいんすかね。
俺、飲みに行かないわけにもいかないし……」
「こまめに連絡してやればいいんじゃないか。
“今から飲み入る”とか、“あと一軒で帰る”とか。
それだけで安心するもんだよ」
谷内は目を丸くした。
「そんなことでいいんすかね」
「案外、そういうもんだよ。不安って、放っておくと膨らむから」

























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