夜、私たちはいつものようにSさんのノートパソコンで動画を流しながら作業をしていました。その日の動画は、とある配信者が友人たちと自作のゲームで遊ぶという内容の動画でした。
配信者たちの掛け合いが何ともおもしろおかしく、なかなか作業の手は進みませんでした。
そのときでした。
『Sさん、Sさんいますか。』
『えっ、Sさんいないの?』
『Sさーん、聞こえてる?』
『聞こえてないのかな?』
楽しげなBGMが突然途切れ、配信者の声でSさんの名前が呼ばれました。
これまで偶然の一致として片付けてきた、刑事ドラマや怪談動画の件とくらべて、それは明らかに異質でした。
その日、動画に登場したメンバーの中に”S”という名前の人はいません。慌てて画面を確認すると、配信者たちは笑顔で戯れあっている最中でした。
そこで「Sさん」と呼びかけるような音声が入るのはとても不自然だと感じました。
流石に怖くなって、私たちは再生を止めました。
「聞き間違いだよね。それか、他の動画の音声が混じるバグとか。」
隣にいたSさんが私にそう尋ねました。
ふと思いたって、私は自分のスマートフォンを取り出し、同じ動画投稿サイトの同じ動画を再生します。
すると、例のシーンでは別の音声が流れていました。
『Tくん、Tくんいますか?』
『えっ、Tくんいないの?』
『Tくーん、聞こえてる?』
『聞こえてないのかな。』
『……いや、ちょっとショックすぎて。』
『わはははは。』
『あらら、Tくん固まっちゃったよ。』
私のスマートフォンで確認して初めて、ゲームに負けたメンバーが他メンバーの呼びかけを無視してショックを演出している、というシーンだと判明しました。先ほどはなかったフリー音源のBGMも流れていました。映像は全く同じものが流れていました。
名前の部分だけが「Tくん」から「Sさん」に入れ替わっていたのです。再度、Sさんのパソコンで動画を再生しました。
音声は「Sさん」のままでした。
「…変だね。今日はもう遅いから、帰ろうか。」
時刻は21時を回ったところでした。作業室は22時に警備員が施錠をしに来ることになっていて、まだ1時間ほど猶予がありましたが、私は帰ろうと提案しました。
何となく、一刻も早く作業室を離れたかったのです。
急いで帰り支度をし、汚した作業台を掃除していたとき、またあの声がしました。
























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