「……絶対に、目を逸らすな……。」
彼が低く言う。
私は震えながら影を見つめる。
近い。
怖い。
瞬きの度に近づいているのが分かる。
とうとう、助手席のドア横まで来た。
ドア1枚隔てた位置に影が立っている。
瞬きをしないように頑張るが目が痛くなって限界が来る。
ガチャッ。
ドアが開けられ、私の目の前まで手が伸びている。
彼が物を投げつけてはいるが、虚しく宙を舞う。
そして⸻その時が訪れる。
次に瞬きをした、その瞬間。
私の意識は途切れた。
⸻⸻⸻
(……。)
気がつくと、私は一人で立っていた。
静まり返った夜道。
街灯の下。
足元に伸びる⸻影。
……いや、……違う。
影が、私だった。
身体が動かない。
声も出ない。
ただ、誰かがこちらを見るのを待っている。
遠くで足音が聞こえる。
若い男女の声。
彼らが私に気づき、足を止める。
⸻その瞬間。
私は完全に理解した。
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