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ヒトコワ

どこかで見た話さんによるヒトコワにまつわる怖い話の投稿です

松田君と俺
短編 2026/01/02 23:04 187view

俺のクラスには、一人だけ、どうしても気味の悪いやつがいた。
名前は仮に「松田」としておく。
そいつは、紙を食べる。

最初にそれを見たのは一年の春だった。
授業中、前の席で何かをもぐもぐ噛んでいる。
菓子でも隠し食いしてるのかと思って覗き込んだら、ノートの端だった。
白い紙をちぎって、ゆっくり噛んで、飲み込んでいた。

「うわ……なにしてんだよ」
そう言うと、松田は振り返って笑った。
「味、ないけど落ち着くんだ」

そのときはまだ、冗談のつもりかと思った。
でも、そいつはそれを毎日やっていた。
授業中も、休み時間も、誰も見ていないときに、紙を口に入れる。
ノート、プリント、チラシ。なんでも。

周りも最初は笑ってたけど、すぐに慣れて、
「松田って変だよな」で済ませるようになった。
俺だけが、どうしても気になった。
というか、近くにいると落ち着かない。
その噛む音が、耳に残るんだ。
紙を噛むはずなのに、ぐちゅ、と湿った音がする。

夏休み前くらいから、そいつの“食べるもの”が変わった。
紙以外にも、ティッシュ、白い花、時にはチョークの粉まで舐めていた。
「白いのがいいんだ」
本人はそう言って、黒板の隅に落ちたチョークのかけらを拾って、舌で転がした。

誰かが注意しても、松田は笑うだけだった。
「俺さ、前に医者行ったんだけど、“異食症”って言われた。
 でも治らなかった。
 白いの見てると、なんか中に入りたくなるんだよ」

その“中に入りたくなる”という言葉が妙に引っかかった。
それから、俺はできるだけ松田を避けるようにした。
でも同じクラスだ。席替えでもなぜか近くなる。
机を少しずつずらしても、次の日にはまた元の位置に戻っている。

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