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次の日、
スマホで自分を撮った。
夜、眠っている自分。
動画の途中、
影がベッドに近づく。
顔はない。
ただ、淫靡な口だけが開いている。
真っ赤な舌が伸びる。
舐める。
舐めながら、
影の中に、自分が取り込まれていく。
その瞬間、画面に文字が浮かんだ。
「これは前菜」
その夜、夢の中で、相手ははっきり言った。
「舐めてるだけだと思った?」
「安心して。
喰う前は、みんなそう思う」
体を這う舌が、ゆっくり弧を描く。
一周するたび、
記憶がひとつ消える。
名前。
誕生日。
…自分を形作るものが一つずつ。
「舐める=確かめる」
「喰う=自分の中に取り込む」
その区別が、ようやく理解できた。
最後に残ったのは、
強烈な快楽だけだった。
だから抵抗できなかった。逃げられなかった。
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