男はじっとこちらをみていた。
大きくて真っ黒な目。ぼんやりと開いた口。その表情は変わらない。はずなのだが、その顔はどこが嬉しそうに笑っているように私には見えた。
男の口がぱくぱくと動く。
あー
あー
あー
あー
狂ったように男が声を出す。
怖い。なんだ、これは。
早くどこかへ行ってくれ。
私は祈るような気持ちで目をぎゅっと閉じ、その場で固まることしかできなかった。
ふと男の声が止んだ。
そしてドアの開く音。
はっと目を開くとそこにもう男の姿は無く、ごく普通のジム利用者が入ってくるところだった。
後日またジムに行くと、私にこの話を教えてくれたスタッフに会ったのでこの話をしてみた。
スタッフは申し訳無さそうに言った。
「皆さんが言うその変な人、防犯カメラで見ると普通のおじさんなんですよ。なので私たちからすると普通の人がスタッフが出てくるのを待っているようにしか見えないんですよね。」
だから「変な人」と言っていたのか。私は妙に納得した。
私はそれからと言うもの火曜日にジムに行くことは止めた。もうあれに会うのはごめんだ。
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