あんなぁ
投稿者:たかぴろん (4)
祖母は死んでいる。
そして棺から音がするのは、誰かが内側からノックしているからに他ならない。
海外の話で、死んだと思い葬儀を開いたら実はまだ生きていた、というのを聞いたことがあった。
でも、もし祖母が生きていたとしても、目の前の壁を規則的に叩いたりするだろうか?
そもそも生前の祖母には、何かを強く叩く力はなかったのだ。
だから祖母が生きているとは、どうしても思えない。
そんなことを考えていると、恐ろしい想像ばかり先行してしまう。
いっそのこと、棺まで歩いて行ってそれを確認してしまおうか。
いや、でも、怖いしなぁ……。
どうしよう、と思っていると、また線香が尽きかかっていることに気づいた。
どうやら、僕に選択肢はないらしい。
覚悟を決めて、祭壇へ歩いていった。すると途中で、部屋の照明が消えた。
停電?
わからないが、周囲は蝋燭の僅かなあかりを残して完全な闇になった。
僕は恐ろしさのあまり気絶しそうになりながらも、歩みを止めなかった。
誰かが棺を叩く音は、その間もずっと聞こえていた。
コツコツと、それは次第に大きくなるように思われた。
僕はまず棺の横を足早に通り過ぎ、祭壇の線香を手際よく取り替えた。ついでに新しい蝋燭に火をつけ、古いものと交換した。そして深く深呼吸し、棺の方へ向かおうと思った、そのとき。
「あんなぁ」
背後から、はっきりと声が聞こえた。
あんなぁ、と。そしてそれは祖母の声に他ならなかった。
僕は少し迷った後で、後ろを振り返ることにした。後悔するかもしれないと、承知のうえで。
そこには祖母がいた。頭で棺の蓋を押し上げ、その隙間から顔を出し、
じっとこちらを凝視していた。
肌は死人の色をしていたし、唇はこれ以上乾きようがないほど水分を失っていた。
落ちくぼんだ目は、僕に向けられているが、虚ろで何を考えているのかわからなかった。
蝋燭の火がその顔だけをぬらぬらと照らしているせいで、首が浮遊しているようだ。
死の臭いが、棺の中から漂っていた。
僕は声を上げることもできず、ただ祖母の顔を眺めていた。
やがて、祖母が言った。ニヤリと、口角が上がったような気もする。
一族の恥だと怒るくらい重要なら一人に任せず父ちゃんも番しろよって思っちゃった。
筆者です。貴重なコメントをありがとうございます。
自分で読み返してみると確かに、説明が不足していましたね。
補足として一文付け加えておきました。
コメントをいただき僕もこの風習を「うちだけなのかな?」と疑問に思い、
改めて実家に電話をして確認したら、
母は「うちはそういうしきたりなの、昔から」としか答えませんでした。
うーん、相変わらず。
ということで、僕もその独自のしきたり?について
納得できる理由は得られずじまいでした。申し訳ないです。
何か伝えたいことがあったのかな
筆者です。コメントありがとうございます。
この体験が、僕の身に現実に起きたことにせよ、或いはリアルな夢だったにせよ、
祖母は何かしらのメッセージを僕に伝えたかったんだと思います。
実際のところはもちろん分かりませんが、僕はそう信じています。
おばあさまも、「はぁ〜、あんなぁ…」で済ましてくれたわけや。もうすぐ消えるぞぉ〜、いい加減読書やめれぇ〜、ってコツコツしながら教えてくれたりしながら。河童じゃなくてエロ本やったら取り憑かれてる。
死後硬直とかじゃないかな?
たまに動くらしいよ!
あんなぁ!は口癖かな?
走馬灯のローソクは変えなかったのかな?
方言とかじゃなくて?
あんなぁ=さよなら とか。