私たちはだいぶ離れた、ほとんど誰も停めていない区画に移動しました。
エンジンを切ったあと、しばらく友人は黙っていました。
やがら、ぽつりと言いました。
「……バックモニターさ。後ろの車の下で何か動いたんだよ」
「猫とかかなと思ったら……手だった。そのまま、頭が……ずるずるって」
「おじさんだった。モニターに映ってるのが分かってるみたいに——にこにこしてて、こっち見て、手を振ってた」
友人はそこで言葉を止めました。
確認しに行った時には、もちろん誰もいませんでした。
友人は、しばらく黙ったあとで、ぼそっと言いました。
「あの車の持ち主も……たぶん気づいてるんだと思う」
あのおびただしい数の御守りたちには
“どうか出てこないでくれ”
──そんな願いが込められていたのかもしれません。
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