「いい子だね。」
「サヤちゃん。」
「もうすぐ一緒になれるからね」
………………
……………
…………
………
……
…
『ワンワンワンワン!!!』
はっ、とした時、私は交通量の多い交差点を、赤信号で渡ろうとしている所でした。
どこからか、聞き馴染みのある犬の鳴き声がして。
その声で、我に返ったんです。
ぬいぐるみからは舌打ちが聞こえました。
信号の向こう、交差点の反対側から、白いぽわぽわとした、犬の影が風のように走ってきて、ぬいぐるみに飛びつきました。
そして、あっという間に私からぬいぐるみを奪い取って首元に噛みつきました。
『あああああああ嫌だああああああああああああぁぁぁ』
って、ぬいぐるみの断末魔。
明らかにおばあちゃんの声じゃなかったです。
低く、唸るような男の声でした。
ぬいぐるみは悲鳴をあげながらのたうち回って、
噛まれた首筋からは、赤黒い血液が吹き上がりました。
白い犬の影は、ぬいぐるみがどれほど暴れようと、決して離しませんでした。
その光景を、立ち尽くして見ていた私は、いつの間にか気を失っていたみたいです。
気がついた時、私はリビングにいて、何故かお母さんが泣いていました。
未だに、あれが一体なんだったのか分かりません。
お父さんにぬいぐるみのことを聞いても、
『え?ぬいぐるみ?そんなのあった?』
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