心臓が跳ねて、私はそのまま走って逃げました。
けれど、背後から聞こえる足音は途切れません。
振り向くと――ニタニタと笑いながら、同じ距離を保ってついてくるのです。
私は混乱しながらも、なぜか怒りのような感情が込み上げてきて、立ち止まって言いました。
「なんでついてくるの?」
しかし、男の子は笑みを浮かべたまま、何も言いません。
声をかけても、表情ひとつ変えず、ただ、目だけがこちらをじっと見ていました。
恐怖がこみ上げ、私はまた母のもとへ駆け戻りました。
そんなことが、何週間か続きました。
そのたびに、男の子はいつの間にか現れて、笑いながらついてくるのです。
やがて数か月が過ぎた頃、母が言いました。
「先生が遠くに行っちゃうから、もう習い事はいけなくなっちゃったの」
私は寂しくて泣きました。もう会えない先生のことを思って。
それからしばらくして、家族でそのショッピングモールを訪れたとき――
習い事の教室は、すでに閉まっていました。
残念な気持ちで歩いていると、あの遊び場の前を通りかかりました。
そこには、立ち入り禁止のロープが張られ、
入口のガラスには「安全点検のため閉鎖中」という張り紙がありました。
中を覗くと、遊具の影に、ぼんやりと何かが動いたような気がしました。
でも――母には、見えていないようでした。
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