実は最近訪れたとある登山道で、熊除けのために定期的に木を叩いていたら、すれ違う人に割と真面目に怒られた。
「あんた観光客か? どこから来たんだ? なんで木を叩いてる?」
「あっ、すみません。今年は熊との遭遇が結構あるみたいなので…。熊鈴を忘れたので熊除けのために音を出してたんですが…。」
「木を傷付けるのは森林保護の観点から、遠慮してもらいたい。」
「あっ、す、すみません…。」
「それから…。今年の夏はかなり気温も上がったから、リスクが高いのだ。」
「あぁ、熊との遭遇のリスクですか。」
「違う!」
この時の否定の仕方が物凄い剣幕だったので、心底ビックリして足が竦むような気持ちだった。
「あんた観光客なんだろ? じゃあこの辺の言い伝えについては何も聞いてないのだな?」
「言い伝え…ですか?」
「そうだ。とにかくそんな棒で木を叩いて回ったらダメだ! 熊除けが必要ならこれをやる。もう絶対に木を叩くんじゃないぞ?」
比較的新しそうな熊鈴を受け取りながら、少し気になることを聞いてみた。
「あの…。森林保護は理解したんですが、言い伝えって何の関係が有るんですか?」
「あんたスマホを持ってるんだろ?」
「えぇ、持ってますが…。ここは電波が入らないですね。」
「 そうか。それじゃあこの山道を戻ったら、『きゅうしりょうもん』という言葉で検索してみなさい。あんただいぶ不味いことをやってくれたな。とにかくもう木を叩くんじゃないぞ!」
「はぁ…。申し訳有りませんでした。」
「いいか? もう木は叩くな!」
「………。はい、もう叩きません。」
「それから、この道はもう間もなく暗くなる。悪いことは言わないから、すぐに引き返しなさい。」
「えっ、でもこの先の巨木を見に行こうと思ってるのですが…。」
「これからの時間は熊が活発に活動する時間だ。本当に悪いことは言わない。今日のところは止めておきなさい。」
「は、はぁ…。」


























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