もちろん、その場できちんとお金も受け取りつつ、「んー、これマジで時給いいかも」と心の中で思ったのだった。
数日後、再び依頼が入った。
「またあの人か…」と少し胸が高鳴るけど、もちろん受け入れる。
指定の駅に着くと、笑顔で私に手を振る彼がいた。しかし、あれ、なんか雰囲気が違う。と気づく。髪が短いし、歯が欠けているからである。
「え、髪切った?しかも…歯?」
私の疑問に、彼は少し照れながら笑う。
「うん、昨日散髪したんだけど、その日に転んじゃって…前歯、ぶつけて欠けたんだ」
「マジで?運が悪すぎでしょ!」
私は笑いながらも、少し心配になった。
それでもデートはいつも通り楽しい。
歩いて、カフェに寄って、途中で軽く写真を撮ったり。彼の小さな不運も、なんだか可愛く思えるくらい自然で。
帰り道、駅までの短い距離を歩く。
「今日は楽しかったね」と言うと、彼が少し照れた顔でカバンから何かを取り出した。
「これ…よかったら、受け取ってくれる?」
差し出されたのは、小さな手作りのぬいぐるみだった。
「え、なにこれ…かわいいじゃん!」
思わず笑顔になる私。
でも、どこか普通じゃない温かみもあって、少し不思議な感じがした。
「作ったんだ。転んで歯を欠いた日も、少し元気出るかなって思って」
彼は少し小声で言った。
「え、マジで?ありがとう~♪」
私は受け取りながら、にっこり笑う。
でも心の片隅で、なぜか少しだけドキドキしていた。
家に帰ると、ぬいぐるみをそっと机の上に置く。手触りも柔らかく、でもどこか、普通のぬいぐるみとは違う……そんな気がした。
それから数日後、また彼から指定が入った。
駅に着くと、待っていた彼がいた。
でも、違うのは右腕に包帯が巻かれていること。「うわ、腕どうしたの?」と聞くと、少し苦笑いしながら答える。
「刃物を使う仕事してて、その時に切っちゃってさ」見ると、確かに包帯の下に小さな傷が見え隠れしている。
「マジで!?大丈夫?」と心配しつつも、デートは普通に進む。
歩きながら、カフェで話して、途中で写真も撮る。包帯のせいで少し不便そうだけど、いつも通りの楽しさがある。





















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