H氏はぞっとして硬直しました。
自分以外誰もいないのは明らかですし、ここは半地下なので風が入り込むこともありません。
ガン・・・・・・ガン・・・・ガン・・・・・・・ガン・・ガン・・・・・・
音は断続的に鳴り響いています。
その音はあたかも入院患者が檻を叩きながら、「ここから出してくれ」と訴えているようで、とても恐ろしい不気味な音でした。
ガン・・・・・・ガン・・・ガン・・・・・・・ガン・・・・・ガン・・・・
音は鳴りやむ気配がありません。静まり返った廃墟の地下。その音は異様なまでに大きく聞こえました。
ここから地上へ戻るためには、どうしたってその音が鳴るほうへ引き返さねばなりません。
H氏は恐怖の絶頂に達しましたが、意を決して振り返りました。
すると、さっきまで檻の内側にあったはずの車いすが、廊下に出ていたのです。
無人の車いすが、十数メートル向こうでこちらを向いていました。
音は、その車いすのすぐ隣の檻から聞こえていたのです。
「!!!!!!」
声にならない悲鳴を上げ、H氏は一目散に駆け出しました。
車いすの脇を通り過ぎる時は檻と反対側に顔を向け、全速力で駆け抜けました。
ガン・・・・ガン・・・・・・・・ガン・・・・・・・・・・・
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