私が以前住んでいたマンションで体験した話。
暑さが和らぎ、少し肌寒く感じてきた10月のある日。
その日は、仕事が立て込み、遅くまで仕事をしていた。23時頃に会社を出て、夜食をコンビニで購入し、自宅へ向かった。
家族には、遅くなると伝えており、先に寝ていてくれと伝えてある。
車を駐車場に停め、階段へと歩き始めた。
4階建ての3階に住んでおり、3階には私達の部屋以外に4部屋ある。
階段から1番奥に私達の部屋があった。
片方にはコンビニ袋、片方にはバッグを持ち、自分の足元を見つめながら階段を登っていた。
「あっ、あの部分、やってないな…」
突然、仕事で抜けている箇所があると気がついた。
「仕方ない…明日、朝イチでやるか」
そんなことを考えながら階段を登り、3階であろうフロアで部屋の入り口を眺めた。
しかし、いつも見慣れているフロアではなかった。
3階のそれぞれの部屋の入り口付近には各家庭の置物があったのだが、それが一つも見当たらなかった。
子供の三輪車や遊び道具、宅配ボックスなどがあるはずだったが何一つ見当たらない。
フロアを間違えたと思い、階段で下へ降りようとした時、
ガチャ
と鍵が開く音がし、1番奥の部屋のドアが開いた。誰かが出てくると思って見ていたが、誰も出て来ない。
その時、何故かその部屋の前に向かっていた。何も考えずただ、開いてるドアを目掛けてゆっくり歩いた。
そして、部屋の前で立ち止まり中を伺うが、真っ暗で中の様子はわからない。
すると、後ろからドンッと押され、部屋の中に入ってしまった。
慌てて出ようとしたが、ドアは閉まり、鍵を開けようとしても全然開かない。
すると、部屋の中央のリビングから
「おかえりなさい。」
と女性の声がした。
女性は私のことを自分の家族と勘違いしてると思い、
「すいません…部屋を間違えてしまったようで…」
と玄関から語りかけた。
「遅かったわね。ゴハン、どうします?」
女性は会話を続けている。
仕方なく、直接お詫びをしようと思い、
「失礼します…」
とゆっくり靴を脱ぎ、リビングに向かった。
リビングには家具が全く無く、部屋の中央に小さなテーブルが置いてあるだけだった。
子供がママごとをする時に使うような小さなテーブル。
そして、玄関からは見えなかったが、テーブルのところに女性が座っている。
部屋の入り口付近まで来た私は、膝をつくように低い姿勢になり、
「あのー、すいません…私、3階に住んでるものです。部屋を間違えてしまったようで…本当に申し訳ございません。お邪魔致しました。」
そう言い残し、立ち去ろうとすると、
「ゴハン、準備しますね。」
私は、
「え?話、聞いてたかな?」と思い、
「いや、ですから、私が部屋を間違えたので…」
そう言いながら女性の方を見て、私は全身に鳥肌が立ち、動けなくなった。
その女性の頭部は無く、体の部分だけが座っていた。
私は恐怖で腰が抜け、動けなくなった。
そうしてる時も女性は何かを私に語りかけている。もはや、何を言ってるかなんて理解できなかった。
頭部がないのに声がする。
そんなことを思っているとどこからか視線を感じた。部屋には何もテーブル以外何もない。
ふと、私のいる場所の天井を見ると、そこには私をジッと見ている女性の顔があった。
私は叫びながら玄関を開け、3階の自分の部屋に駆け込んだ。
すぐに鍵をかけ、玄関でへたり込んでいると、
誰がか歩いてる音がした。
コツ、コツ、コツ、
ゆっくりと階段を降りてるような音。
そして、3階のフロアの各家庭の玄関を前を歩いている。
こちらに近づいているのはすぐにわかった。
私の部屋の前で立ち止まったであろう女性はしばらく玄関前から動かず、何かボソボソっと独り言を言い、立ち去って行った。
私は、すぐに寝室に向かい、布団の中に潜り込んだ。























すご