少しの放心状態の後、私はすぐに着信とその留守番電話の履歴を削除した。
こんな気分の悪い着信を受けてどうやって眠れというのか。
友人に連絡しようかとも考えたがこんな夜中に起きている様な友人は持っていないし電話して起こしてしまうのも申し訳ないという気持ちが勝ってしまう。
私はまたスマホをサイドテーブルに置くと部屋の電気をつけた。
明るくて眠れたものではないがこの状況で真っ暗な部屋ではとても怖くて目を閉じれなかった。
明るく照らされた部屋で私は再びベッドに横になった。
布団から手足が出ていると妙にソワソワしてしまい手の先からつま先までしっかりと布団の中にしまった。
妙に耳に残った寝返りをうつなという言葉が引っ掛かり仰向けの体勢のまま目を閉じた。
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いつの間に眠ってしまったのだろうか。
うっすらと目を開いた私はその場の異変に気付き目を見開いた。
部屋の電気が消えている。
先ほどまで確かに明るかった部屋が真っ暗になっていたのだ。
咄嗟に電気のリモコンを手に取ろうと体を起こそうとした私の脳裏に「寝返りをうたないでください」というあの声がよぎった。
思わず仰向けのまま動きを止める。
よりによって電気をつける前にその言葉を思い出してしまったのは失敗だった。
カーテンの隙間から入る微かな街灯の光でだんだんと暗闇に目が慣れてくる。
最初は頭に引っかかっていただけの寝返りをうつなという警告はいつしか確信へと変わっていた。
視界の端に何かがいるのだ。
仰向けでベッドに横たわる私の右側、部屋の端で何かが動いている。
横をしっかり向けないので確実に視界に捉える事はできないが、その気配はしきりに何か同じ動きを繰り返しているように思えた。
それが私の顔を覗き込もうとしていると気付いた時、全身に鳥肌が立つのを感じた。
視界の端のそれは、直立の姿勢から上半身をグンと前に突き出し顔をこちらに近付ける動作を何度も何度も繰り返していた。
ただその距離は私の顔を上から覗き込む為には少し遠く、それが顔を前に突き出しても仰向けに寝る私の視界にギリギリ頭の上部が入ってくるぐらいの距離だった。
顔を見てはいけないと直感で思った。
それと同時になぜ寝返りをうってはいけないのか理解した。
それと対面してしまうからだ。
冷や汗が首筋を伝うが私は恐怖でそれを拭う動作さえ出来なかった。
このような状況でも人間の体は正直で、背中がムズムズと疼き出す。
普段であれば横を向いて背中を掻けば済むだけの話だが、今はそうはいかない。























暗闇の中で更に目を開けられない状況って、それだけで普通は耐えられないくらい恐ろしい。
最後はどういう意味なんだろう?
めちゃくちゃ寝癖付いてたんかな。