模造刀？

4歳の誕生日に貰った模造刀の話です。
最初の方は記憶が曖昧ですが、本家からのプレゼント？だったそうで、昔から抜刀の練習をしていた私は中身を見た瞬間大喜びでしたが、父は苦笑していたのを覚えています。
そこから年月が流れて私が14歳の頃の話、私も物心が着いていましたので、父の苦笑の理由もなんとなく分かりました、今までずっと抜刀の練習をその模造刀でしていましたが、見た目が異様でした、まず凄く重いです2kgほどあると思います、まず模造刀ではない重量です、次に下緒が鞘の全体を包むようにして結ばれていて鞘の表面が見えません、流石に普通の模造刀とは違うので違和感はありましたが、これと言ってなんのトラブルもなかったので気にもとめず過ごしていました、そんなある日、とある友人に…

友人「今週の土曜日○○廃病院に肝試し行こ！」

と言う感じに誘われました、その日は父親が家にいない日で暇でしたので誘いに乗ることにしました、しかし…

友人「そういえばお前の持ってるあの刀、持ってこいよ(笑)」

私「は？なんで、お前、あれは遊び道具じゃn」

友人「まぁまぁ頼む(笑)俺バット持ってくるからさ(笑)」

今じゃ銃刀法違反になって警察のお世話になりかねませんが、当時は切れないから大丈夫、と言った不確かな知識しかなく、結局友人におされてしまい私はあの異様な模造刀を持っていくことになりました。
そしてその夜、時間は10時頃だったと思います、友人と集合し目的の廃病院に着きましたが、やはり空気が違いました、今まで何度か肝試しに行ったことがありましたがそこは桁違いでした。

扉などはなく、窓ガラスも割れていて風が中から私たちを引きずり込むかのように吹いていました。
入って数分が経った頃１階には特に何も無くこじんまりとした受付と診察室、共にもぬけの殻でした、仕方なく2階に行くことになりました、今思えばやめておけばよかったと後悔してます。
2階には緊急オペ室と手術室がありました、2階には機材や医療器具、さらには私物らしきものまであり、この階はまるで今この一瞬でひとが全員居なくなったような雰囲気でゾッとしました。
友人はその雰囲気に気付いていないのかなんの躊躇もなく手術室へ入っていきます、私も友人に続いて入りましたが、特にこれといった怪しいものはありません、が、それでも悪寒は凄かったです、今にも心拍数の音や生々しい肉を触る音が聞こえてきそうで、その部屋だけ次元が違うかのようでした、それでも友人はつまんなそうにしてそこら辺に転がったガラス片を蹴り飛ばしました、それと同時に…

???「ぁぁ…」

という女性のような声が耳元で聞こえました、私はゾッとして手に持っていた模造刀に力を込めて、後ろを振り返って構えましたが、そこには何もいませんでした、

友人「何してんだこいつ？」

と言わんばかりの視線を向ける友人を見るに、恐らく何も聞こえてなかったのでしょう。
気を取り直し、次は緊急オペ室に入ろうとしました、友人が足を1歩踏み入れた瞬間…

「ﾊﾟﾘｶﾀｶﾀｶﾀｶﾀ」

という音がなり部屋全体が黒くなり始めました、流石の友人も聞こえ見えたようで、後退りをしていました、私は最初それが何か分かりませんでした、しかし友人が後退って私の所まで来た瞬間、なんと私たちを見る目が幾つも黒い何かから出てきたのです、あきらかに1人2人では無かったです、おそらく10人程居たと思います、私は慌てて友人を連れて逃げようとしますが、友人は腰が抜けて自分で立つことも無理に見えました、バットも手から離していました、その時…

黒い何か「体ちょうだい」

と恐らく目の前の得体の知れないものが言ったのだと思います、しかしその声は先程聞こえた女性の声でもなく、この世の物とは思えない声でした、指を指して言われた瞬間、私は抜刀をする余裕もなく咄嗟に模造刀をその得体の知れないものに振りかぶっていました、その時鞘がものすごいスピードで抜け黒い物体めがけて飛んでいきました、そして黒い何かに鞘が飲み込まれた瞬間…

黒い何か「あぎゃーぁぁぁああいぎぃ」

という奇声を上げていました、私はそれからひたすらにその黒いもの達に模造刀を振りかぶっていました、5分程だったと思いますが、凄く長く感じ生きた心地がしませんでした、気が付くとその黒い何かも嫌な空気も無くなっていました、私は刀を下ろして放心状態になっていました、ハッと我に返り、振り向くと友人は口を開けて涙目になりながらお漏らしをしていました、

私「友人大丈夫か!?」

私はすぐに友人を立たせ、飛んだ鞘を回収してその場から逃げました。
逃げてる間に友人は青ざめた顔で…

友人「人と人がグチャグチャに混ざったバケモンが見えた」

なんと友人にはあの黒いものが何かハッキリ見えたようでした、