5歳の頃。
母が弟を出産するため実家に帰る事になり、私も一時期東北某県で過ごしていた。
私は母の実家が大好きで、祖父母や従姉妹に囲まれて楽しい毎日を送っていたため、ずっとここに居たいとすら感じていた。
その日は臨月を迎え入院した母の見舞いを早々に済ませて、駅前の商店街を祖父母と歩いていた。
真冬の午前と言うこともあり、辺りは閑散としており誰も居なかった。
暇つぶしに後ろを見ると、いつの間にか後ろに誰かが歩いていた。
背丈は私くらいで、白いシャツの上に真っ青なニット、襟にはループタイを付け、チェックのスラックスを履いていた。
手には木の杖をつきなからヨタヨタとした足取りで進んでくる。
近づいて来ると、それは子供ではなかった。
私くらいの背丈の老人だった。
それだけならそういうパーソナリティの人で済む話だが、真っ白い肌に顎と毛の全く無い頭が異様に飛び出して内側にひしゃげている。
三日月に顔がある絵が良くあるが、丁度あの様な感じである。
その中心の顔は、昔某ニコレットのCMに出ていたキャラクターの様に彫りが深く、口角が上がり、眉間に深いシワが寄っていた。
奥にある瞳は見た事ない様な薄い青で、ギラギラした緊張感があるものの何処か遠くを見つめている。
私たちの脇を通り過ぎる瞬間、その横顔を至近距離で目撃した私は恐怖に耐え切れずに叫びながら走って逃げた。
その後追いついて来た祖父母は錯乱して泣き叫ぶ私に何故かとしきりに尋ねならがら車で家に帰ったが、結局
「病院が暗くて怖かったんだね」
「お母さんがいなくて寂しかったんだね」
という解釈をされて終わった。
私は話したらあの老人がまた現れるのではという恐怖でついぞ真相を語る事は出来なかったが、祖父母の口ぶりはあの老人を見ていないかの様であった。
そのため私も自分の妄想かとも思おうとしたが、老人の服装は子供の妄想にしてはリアルで妙に洒落ていたようにも思う。
幼少期に小さいおじさんを見る話はしばしば聞くが、これも少し大きいながら妖精おじさんの類だったのかもしれない。
























※コメントは承認制のため反映まで時間がかかる場合があります。