彼女「わぁ、いい車だね。ハイキングなんて初めてだから楽しみ。こんな格好でいいよね?」
俺「バッチシじゃん、似合ってるよ。じゃあナビ起動してっと…」
ナビ「お兄ちゃん、会いたかった。今日はアリスをどこ連れてってくれるの?」
彼女「え…なにこれ」
俺「あ…いや、これAIナビってやつでさ。喋るキャラが選べるんだけど、最近バグってるのか口調がコロコロ変わるんだ」
ナビ「……」
(なんだよ、空気読んで口調戻してくれよ)
そんなことを思いながら、あらかじめ登録していた御身山にルートを設定する。
ナビ「ルート案内を開始します」
彼女「あ、ああそうなの……びっくりした」
俺「俺もびっくり。なんだよお兄ちゃんってw」
ナビ「目的地を見失いました…」
俺と彼女「え?」
もう一度設定し直す。なんか、ちょっと怒ってない?
ナビ「了解しました。目的地への案内を開始します」
ふう。とりあえず出発だ。
順調に目的地に向かっていたが、二人とも押し黙ったまま変な空気になってしまった。
白けた空気を吹き飛ばそうと、音楽をかけようとしたその時。
ナビ「この先、500メートル先を…」
あれ?だんだん声がゆっくり…変だ。低くなっていく。
ナビ「……左折しろ」
まるで別人のような男の声だ。なんだこれ。
俺「ちょっとナビ切ろうか。やっぱこいつ壊れてるわ」
ナビ「彼女さん、逃げた方がいいです。この男は──」
ブチッ。電源を切った。
彼女「え?(ブルブル)」
俺「大丈夫だよ、これでもう誰も邪魔しない。さあ行こう」
俺はふたたび目的地に向かってアクセルを踏み込んだ。

























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