少し離れて暮らしている祖父が未明に脳梗塞で倒れたのだという。
その瞬間、昨夜のノックが脳裏によみがえった。
「あれは、ただの勘違いなんかじゃなかった。
助けを求めていた。
私に、何かを伝えようとしていた。」
……そんな気がしてならなかった。
祖父はその日、奇跡的に一命をとりとめた。
けれど――
二週間後に、静かに息を引き取った。
家族には、あの晩のノックのことを一度も話していない。
話そうと思えば、話せる。
でも、できない。
本当に、あのノックが祖父のものだったのか。
それを知ってしまうのが、
何よりも……怖いのだ。
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