コンコン

これは、私が中学生だった頃に体験した出来事だ。

当時、私はある人気ゲームに夢中で、夜更かしするのが当たり前になっていた。
その晩も、深夜3時を回った頃――ようやくゲームを終え、寝る前にシャワーを浴びようと風呂場へ向かった。

家の中は静まり返っていて、
どこか……空気が重たかったのを覚えている。

脱衣所で服を脱ぎ、浴室のドアに手をかけた――その時だった。

コンコン。

背後の脱衣所のドアが、小さくノックされた。

家族の誰かが様子をうかがっているのだろうと、

「誰ー？」と声をかけたが、返事はなかった。

少し胸がざわついたが、気にせずシャワーを浴び始めた。

頭を洗っているときのことだった。

コンコン。

今度は、はっきりと。
先ほどよりも、強く、重い音だった。

（……なんなんだよ）

苛立ちを押さえきれず、私はシャワーを止め、濡れたまま脱衣所を飛び出した。
そしてドアを開ける。

……だが、そこには誰もいなかった。

リビングにも、廊下にも、人の気配はない。
ただ、家の中が――異様なほど、静まり返っていた。

心の奥に、冷たいものがじわじわと広がっていくのを感じた。

私は急いで自分の部屋へ戻り、布団を頭までかぶって震えていた。
そうやって震えているうちに、いつの間にか眠ってしまった。

──朝の5時頃だっただろうか。

母が突然、私を叩き起こした。

寝不足でイライラしていたが、その言葉にはっと目が覚めた。

「起きて！ おじいちゃんが倒れたの。病院行くよ、早く！」

私は、夢でも見ているような感覚のまま、無言で立ち上がった。