小学校の頃さ、校舎の裏に、ちょっとしたプレハブの物置みたいな建物があったの覚えてる。
いや、正確に言うと、”あった気がする”ってだけなんだけど。
ある日、6時間目が終わったあと、俺ともう一人――名前思い出せないんだけど、ずっと一緒に遊んでた友達――が、「あのプレハブ、中どうなってんのかな」って話になってさ。
それで、放課後に探検しようってことになったんだよ。
周りに誰もいなくて、校舎の陰にすっぽり隠れてるプレハブのドアを、ガタガタと引いたら、意外と簡単に開いた。
中は暗くてカビ臭くて、スチール棚が錆びて並んでるような…そんな空間だった。
俺の手元には、筆箱に入れてた小さなライトしかなかったんだけど、そいつ――グレーのジャージ着た友達が、やけにテンション高くてさ、「お宝探しみたいやな!」とか言って、ズカズカ中に入ってくの。
俺も仕方なく後ろをついてったんだけど、物置の奥、ほとんど光も届かない場所で、そいつがしゃがみこんで、何かを拾い上げた。
写真だった。
何枚か束になってて、白黒。
小学校の教室の中っぽい場所で、子供たちが並んでる。
でも、顔が全部、マジックか何かでぐしゃぐしゃに塗りつぶされてたんだ。
「気持ちわりぃ…」って俺が言ったら、ジャージのやつ、ニヤッと笑って、
「これ、ウチのクラスのやつや」って言ったんだよ。
は? って思って、もう一回写真をよく見たんだけど、塗りつぶされてるせいで、誰が誰かわかんない。教室の掲示物とかは確かに見覚えがある気がするけど。
「持って帰るわ」とか言って、そいつはそれをポケットに突っ込んだ。
それから急に空気が変わったというか……プレハブの奥に、もうひとつドアがあるのに気づいた。
そいつがそこに手をかけて、開けようとした時、急に俺、ものすごい違和感を感じたんだ。
「開けたらアカン」って、頭のどこかで警鐘が鳴ってる感じ。
でもそいつは、何も聞こえてないみたいで、
「ここだけまだ見てへんしな」って、ぐいっとドアを開けた。
真っ暗な中に、白いワンピース着た誰かが立ってた。
顔は見えなかった。
というか、見ようとしたら頭が割れそうなほどにズキンッと痛んで、気づいたら俺、外に出てて、夕焼けが見えてた。
そいつは?
――いなかった。
そこからの記憶が曖昧なんだ。
家に帰って、親に怒られたとか、ランドセルがどこかに置きっぱなしだったとか、そういうことは覚えてるんだけど、その日学校で誰と遊んだかとか、帰りに一緒だったやつとか、全然思い出せない。
ただ、何年も経って、中学の卒業前にふとあのプレハブの話を思い出して、同級生に「あの校舎裏のプレハブ、あったよな?」って聞いたら、
「何それ?」って言われた。
























※コメントは承認制のため反映まで時間がかかる場合があります。