『この話を最後まで読んだ人は……。』
そんな書き出しから始まるラクガキがあると聞いたのは、俺が高校生の頃だった。
当時の俺はオカルトにハマっていて、怪談だの都市伝説だのを読み漁っていた。
でもこの話にはどこか引っかかるものがあって、妙に印象に残っている。
たしか、そのときは「そういうのって、最後に書くもんじゃねえの?」と笑い飛ばした記憶がある。
子供だましのように思えたし、本気で怖いとも思わなかった。
それをふと思い出したのは、大学のオカルトサークルの飲み会のときだった。
持ち寄りの怪談を順番に披露していて、自分の番が近づいてきたとき、あの話がふっと脳裏に浮かんだ。
オカルトサークルとは言っても、心霊スポットに行っては写真を撮る程度の、わりと緩い集まりだ。
集まっているのも、オカルトが好きっていうより「ちょっと面白そう」くらいのノリの奴ばかり。
当然、披露される怪談もメチャクチャだった。
ありきたりな話ならまだいい方で、語り手が情緒不安定になったり、「お前だ!」と無駄に叫んだりするだけのやつもあった。
次第に場の熱も冷めて、みんなスマホをいじり始めたり、つまみをつついたりしていた。
そのとき、俺の番が来た。
――まあ、せっかくだし、あの話をしてみるか。
そんな軽い気持ちで口を開いた。
「俺の地元にさ、『この話を最後まで読んだ人は……』って書き出しのラクガキがあったんだよ」
酔いも回っていたせいか、俺は少し話を盛ることにした。
どうせ誰も真に受けないし、適当に不気味な雰囲気でも出しておけば、それっぽくなるだろうって。
「で、そのラクガキ、なんか変でさ。日によって内容が変わるんだよ。
『この話を最後まで読んだ人は……』っていう冒頭だけは毎回同じなんだけど、続きが違うの。
まるで、誰かが毎晩、こっそり書き足してるみたいにさ」
「なにそれ、ちょっと怖っ」
誰かが笑いながら言った。まだ茶化す余裕があるようだ。
「最初は『夜中にドアを見ないでください』とか、『あなたの名前を呼ぶ声がしても、決して返事をしないでください』とか。まあ、ありがちな不気味系だったんだけどさ」
俺はテーブルに置いた缶ビールをくるくると回しながら、みんなの反応をうかがった。
予想外に、全員がこちらに集中していた。
なんだ、みんな意外とこういうの好きじゃん。
そう思って、俺はさらに話を膨らませることにした。
「でもさ、だんだんその内容が意味不明になっていって……。
『始まりを見ないでください』とか、『気付かないでください』とか。
もう、何を言ってるのか全然わからない。なのに、すげえ不気味でさ」























呟いた人って・・・・