数年前のある火曜日のことである。
警備員をしている自分が職場である防災センターにいると、同僚である太田さんが別の
同僚である斉藤さんと話をしているのが横から聞こえてきたのである。
「そういえばさ、何だか一昨日のことが思い出せないんだよね。」
「なんだい若年性認知症か何かかい?」
「いやね、不思議なんだけどさ、先週の金曜日とか土曜日のことは思い出せるんだよ。
でも日曜日のことだけはどうにも思い出せないんだ。」
その声を近くで聞いていた自分も何となく日曜日がどんな一日だったか思い出そうと
してみた。
しかしながら、本当に何も思い出せないのである。
昼に何を食べたかとか、夜に何を食べたかとか、どのような一日だったのかがまるで
出てこない。
この文章を読んでおられる多くの社会人の方は、大人にもなればそういうこともある
だろうと思われるかもしれない。平和で平凡で印象に残らない一日なんていくらでも
あるだろうと。
確かに警備員のごときは、一日働いて何の異状もなく終わるのが理想であり、(その
警備の現場にもよるだろうが)むしろ事件や出来事がある日の方がはるかに少ないし、
そんな普通の日はあまり記憶に残らないということはある。
しかしながら、その日曜日の記憶がないことには不思議な違和感を覚えたのである。
曖昧な記憶も残っていない、むしろ「この週は日曜日はなかったんだよ」と誰かに
教えられた方が納得できそうなくらいだった。
一応確認しておこうと、業務用パソコンでその月の勤務シフト表を出してみる。する
と不思議なことにその日曜日の列がすべて空白になっているのである。これでは誰が
その日の勤務だったのかもわからなかった。
隊長にどういうことか聞くが、「あれ、おかしいな今月分はちゃんと入力してるは
ずなのに」と首をひねるばかりだった。その後、隊長に日曜に何をしていたか尋ね
たが、返事は予想した通りだった。
また警備日誌も確認したが、土曜日から日曜日までのものと日曜日から月曜日までの
ものが保存されていなかった。























怖いような不思議なような。リアルで面白かった
世にも奇妙な物語でありそうな話。
これは本当は実話で、『物語の体裁』を取った結果、こうなったのでは?