俺の趣味は夜中の散歩だった。
ベッドタウンの、深夜寝静まった人気のない住宅街をぶらぶらと歩きながら、あれこれ考え事をするのが好きだったんだ。
それはある夜中のこと、散歩のついでにコンビニに向かう途中、ある丁字路に差し掛かった時の話だ。
正面は住宅の壁が立ち並び行き止まり、左右の道は塀で見通しが悪いため進路の突き当りにカーブミラーが立ってた。
普段は思考に集中するため、歩きなれた道を俯き加減で歩くので、ミラーはの存在は視認しても注意深く見たりはしない。
まして車も通らない夜中の住宅地の中の道だ。
普段なら目も向けないところだが、その時は何となくカーブミラーに目が行った。
オレンジがかった薄暗い街灯に照らされ、二つの湾曲した丸い鏡が、まるで外斜視のように左右の道をそれぞれに映し出していた。
コンビニへはこの角を右折する。
本当に何気なく、向かって右側のミラーを見た。
その歪んだ鏡面に、裸に青白い肌の手足の長細い子供が、笑顔を浮かべたままこちらへ音もなく走ってくるのが見えた。
パニックで視線が逸れた拍子に、目に入った左のミラーの中、そこには全く同じような子供が反対方向から恐ろしいスピードで迫ってくる。
俺は踵を返し全速力で逃げ出そうとして、一瞬振り返りミラーを確認した。
左右から迫りくる、鏡写しの不気味な二体の化け物が、角のところで正面からかち合う寸前だった。
グシャ!
俺が脱兎のごとく駆けるその背後、水っぽいもの同士が衝突して弾けるような音が響いた。























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