そんで最後の三つ目が「校歌斉唱」。
いやぁ、これがマジで、一番気味悪かったね。
俺の学校ってさ、一ヵ月に二回くらいの頻度で、授業中突然、校内放送が流れんのよ。
「全校生徒の皆さん、校歌斉唱のお時間です。目隠しをして、歌詞の情景を思い浮かべながら、元気いっぱい、大きな声で、笑顔で楽しく歌いましょう」
意味分かんないでしょ?
授業中、何の脈絡も無く、本当に突然、そんな内容の校内放送が流れて、校歌斉唱が始まるんだよ?
しかも、先生に黒いハチマキみたいなのを配られてさ、それで目隠ししなきゃいけないのよ。
全校集会で校歌斉唱する時は、目隠しなんかしないんだけど、授業中に校歌斉唱する時は必ず目隠しをさせられんのよ。
俺達からしてみれば、小1の時から、ずぅーっと続いてる習慣つーか仕来りだったから、あの当時は別に、特段変だとは思わなかったんだけど、大人になった今、思い返してみると、あれはマジで異常だったなってしみじみ思うね。
そんで、事件が起きたのは俺が小6の時だった。
あん時は、教育実習か何かで若い女の先生が来ててさ、その日は、その人が授業をしてたのよ。
うちの担任のおっちゃんは、教室の隅っこに座って、ニコニコしながらその様子を見ててさ。
そしたら突然、例の校内放送が流れた訳よ。
「全校生徒の皆さん、校歌斉唱の、お時間です」
そしたらうちの担任が、急いで引き出しから、目隠しを取り出して、いつもの様にみんなに配る訳。
教育実習の先生はポカーンよ。
まぁ、授業中突然、「校歌斉唱のお時間です」ってなったら、そりゃそうなるわな。
うちの担任は、その先生に「あー、ごめんね、後で説明するから……」とか小声で言ってて、何かバツが悪そうだった。
で、俺もいつもの様に目隠しをして、放送からピアノの伴奏が流れ始めたから、みんなと一緒に校歌を歌ったんだけど、確か二番の歌い始めぐらいだったかな、俺の顔に、何かがピチャピチャ掛かったのよ。
ぬる~い液体が、ピチャピチャ、ピチャピチャ、飛んでくんのよ。
俺はこん時、一番前の席だったんだけどさ、一体何が俺の顔に付着したのか、気になりすぎちゃって、小学校6年間の中で、本当に初めて、校歌斉唱中に、目隠しを取ったのよ。
俺の顔に掛かった液体の正体は、直ぐに分かったよ。
教育実習の先生の唾液だった。
教育実習の先生が白目向いて、口を大きく開けて、舌出して、頭を横に高速でぶんぶん振り回してるから、唾がそこら中に撒き散らされて、目の前にいる俺の顔にも、ピチャピチャ、ピチャピチャ、飛んできてたのよ。
マジで意味が解らな過ぎて、声を出せなかったよ。
頭がモゲちゃうんじゃないかってぐらい、ブンブンブンブンブンブンブン、首を激しく横に振っててさ、まるで狂ったメトロノームみたいでマジで怖かった。
とてもじゃないけど、何やってんの?とか聞ける状況じゃなかったね。
おふざけとか悪ノリの範疇を超えてる、本当にヤバイ何かが、今、この先生の身に起きてるんだって、子供ながらに一瞬で理解出来たのよ。
教育実習の先生を助けてやってくれよ!と思って、担任の先生を探したら、担任の先生は後ろの扉にいた。
先生は、声を殺しながら、必死の形相で、引き戸を抑えつけていた。
歯を食いしばって、顔を赤紫色にしながら、冷や汗をダラダラかいて、とにかく必死に、引き戸が開かない様に、抑えていた。
一体何がどうなってんだよって思いながら、先生を見つめていたら、気が付いた。
見えない何かが、扉を開けようとしてんだよ。
見えない何かが、教室の中に、入ってこようとしてんだよ。
先生は必死になって、その侵入を防ごうとしてるんだよ。
それに気付いた俺は直ぐに立ち上がって、先生を手助けしようと駆け寄ったら、先生が首を横に振りながら「もどれ」って、口パクで、そう言ったんだ。
あの時の先生の顔、余りにも切迫した鬼気迫るあの表情、俺多分、一生忘れらんねぇよ。
俺は、ただ、涙目になりながら、みんなの歌声が響く教室の中に立ち尽くした。
目隠しをして校歌斉唱するクラスメイト達、白目向いて舌を出し頭を振り回す教育実習の先生、何かの侵入を必死に防ごうとしている担任、余りにも異様な空間の中で、俺は、何となくだけど、理解出来た。
授業中の校歌斉唱は、多分だけど、歌う事自体はどうでも良くて、本当の目的は、生徒たちを恐がらせない事なんじゃないかって。
何かが教室に入ろうとしているって事を、生徒たちに気付かせない為に、目隠しをさせて校歌斉唱させてるだけなんじゃないかって。
校歌斉唱の校内放送は、先生方にとっては「何かが来たから、それを絶対、教室に入れるな」っていう警報なんじゃないかって。
その事に気付いてしまった俺は、本当に恐くて、怖くて、頭がどうにかなりそうだった。
校歌の三番目が、そろそろ歌い終わるかってタイミングで、教育実習の先生が、床にぶっ倒れて、それで、こんな言い方あれだけど、殺虫剤を掛けられたゴキブリみたいに、激しくのたうち回った後、ピタッと動きが止まって、意識を失ったみたいだった。
それと同時に、担任の先生も、引き戸を抑えつけるのを辞めて、そのまま、へなへなと座り込んで、扉に顔からもたれ掛かっていた。
肩で息をしてる先生が、安堵の表情を浮かべてたから、このイカレた時間はもう終わったんだって、直感的に分かってさ、マジでホッとして、涙がボロボロこぼれてきたよ。
校歌斉唱が終わった後、担任の先生が息も絶え絶えに、教育実習の先生のもとに駆け寄って、「大丈夫ですかー、○○先生、聞こえますかー、大丈夫ですかー」って声を掛けたり、揺さぶったりしたけど、反応無し。
みんなが目隠しを外して、教室中が「え!○○先生どうしちゃったの!」「○○先生大丈夫なの!」って、またしても、しっちゃかめっちゃかの大騒ぎ。
直ぐに担任が、教育実習の先生をおんぶして、保健室に連れて行ったけど、その後、あの先生が戻って来る事は無かった。
あの先生の身に、一体何が起きたのかは、未だに謎だし、安否も判らない。
もっと、まともな学校で先生を続けてくれてたら良いなって思うけど、どうなんだろう。























ひえー、教職員の方、お疲れ様です
めちゃくちゃ面白かったです!
どこの小学校なんだろ?(・∀・)
童守小学校かな
kowai
まだいるのでしょうか?
怖い怖い怖い怖い
怖い
怖、、
侵入に成功したクラスは今まであったのだろうか、
教育実習の先生頭が狂ったとかじゃなくて取りつかれ、、た、、、?
こわい‼️
↑それなー
こわいって
教育実習生の人大丈夫かな?
この放送聞いたらトラウマになりそう、、、
何でこうなる
何でこうなるの
何でこうなるのかな
類型のない怪異ですね、センスに感心しました
公務員だから労基にも相談できんジャマイカ
鳥鳥鳥鳥鳥鳥鳥烏鳥鳥
一箇所だけある烏の文字を見つけると願いが叶ったのに勿体無い
怖っ
嘘松